研究課題
【目的】本研究課題は、リンパ節が血流とリンパ流を繋ぐ"道"として作用していることを証明し、その"道"が皮膚癌(その中でも特に悪性黒色腫)の転移にどのように関与しているかを解明することを最終目的としている。そのために、まず今年度は正常なリンパ節の構造と機能をイメージング技術で画像化することを目指した。【方法】研究にはマウスのリンパ節を用いた。まず最初にリンパ節内の血流とリンパ流の分布を調べるために、蛍光物質で標識したゼラチンを血流とリンパ流に乗せて潅流した。蛍光標識ゼラチンは、赤色の蛍光色素と緑色の蛍光色素の2種類を用いて、2色分作成した。一方の蛍光標識ゼラチンをリンパ節の潅流領域の皮下に注射してリンパ流に乗せ、もう一方の蛍光標識ゼラチンを心臓から注入して血流に乗せた。そのリンパ節を摘出した。摘出したリンパ節を薄切し、免疫蛍光染色と組み合わせて蛍光顕微鏡で観察した。【結果】摘出したリンパ節を薄切し、血管およびリンパ洞に対して免疫蛍光染色を行って蛍光顕微鏡で観察したところ、皮下注射した蛍光標識ゼラチンは、リンパ洞内に分布していることが確認できた。同様に心臓から注入した蛍光標識ゼラチンは血管内に分布していることが確認できた。リンパ節内では血流とリンパ流が近接して存在し、お互いに密接に絡み合うように分布していた。2種類の蛍光標識ゼラチンが混ざり合っているところは確認できなかった。【考察】本研究ではイメージング技術を用いることで、一つの画像の中に機能と構造双方の情報を盛り込むことに成功した。その画像からは、リンパ節は血流とリンパ流を繋ぐ道としての役割を果たすために非常に適した構造を有していることが明らかとなった。しかし、実際にリンパ流と血流が混ざり合うところを捉えることはできなかった。【今後の展望】来年度以降は皮膚癌の転移とリンパ節との関係について、研究していく予定である。
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