研究課題
侵襲に対する生体反応は,遺伝子多型によっても少なからず左右される.この個人差は,臓器障害の発症頻度や転帰に大きく影響することが示唆されている.本研究は,本邦の症例を対象として,遺伝子多型に関する情報と臨床経過との関連を研究することで,日本人独自の重症救急患者に対する個別化治療を確立することを目的としている.今年度は,多施設共同研究(計5施設)でより多くの症例の遺伝子情報と臨床情報を収集した.このうち,重症敗血症における遺伝子多型の関与を明らかにするために,IL-1 receptor antagonist 遺伝子のvariable number of tandem repeat 多型 ( IL1RA VNTR )を取り上げ,臨床経過や転帰への影響について検討した.検体採取時期から,導出コホート(自施設症例; n=261)と検証コホート(多施設症例; n=793)に分け,ICU患者の転帰とIL1RA VNTRとの関連を検討した.さらに,健常者80名を対象に,in vitroでLPSにて刺激した全血の血清中IL-6,IL-1ra濃度を測定し, IL1RA mRNA発現量を測定した.その結果,導出コホートおよび検証コホート両方において,RN*2 alleleの保有数が多くなるにつれてICU死亡率,重症敗血症罹患率ともに有意に上昇していた(P adj=.002). LPS刺激下で,培養血中IL1RA mRNAを測定したところ,RN*1.2症例では1.1症例に比しその発現が有意に抑制されていた.したがって,RN*2 alleleが抗炎症性サイトカインの発現低下を介して重症敗血症患者の転帰を悪化させている可能性が示唆された.本邦において集中治療室における高サイトカイン血症対策を中心とした重症敗血症個別化対策への応用が期待される.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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救急医学
巻: 36 ページ: 1110-1115