本研究は、救命救急外来で使用できることはもとよりドクターカーやドクターヘリなど病院外での緊急使用も可能な、バッテリー駆動によるハンディタイプの緊急生命維持装置の実現を最終目標とする。ディスポーザブル部分である人工肺と血液ポンプ、および駆動コンソール装置の開発研究のみならず、圧力損失を低減する薄肉タイプの送脱血カニューレと、特にセッティング時間を短縮するためのプレプライミング技術の確立を目指す。我々の研究グループがこれまで培ってきた人工心臓の技術を応用することで、心肺補助システムを一体化できるとともにシステム全体の小型化を図った。 平成24年度は人工肺の中空糸には単純な多孔質膜ではなく血漿漏出が原理的にないシリコーン製中空糸を用いたプロトタイプ人工肺の表面コーティング手法を検討し、表面に親水性血液適合性物質であるホスホリルコリン基機能性ポリマーを用いることで長期間の蛋白吸着を抑制することが可能であることを見出すことができた。 この結果により、シリコーン製中空糸人工肺を用いた緊急生命維持装置は長期間の心肺補助機能を有することが確認でき、将来の実用化に向けた実現可能性を確認できた。
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