研究分担者 |
兼松 隆 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (10264053)
北山 友也 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助教 (60363082)
本山 直世 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助教 (70509661)
北山 滋雄 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (80177873)
白石 成二 国立がん研究センター研究所, がん疼痛研究室, 室長 (90216177)
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研究概要 |
癌患者の痛みの中でも治療が最も困難なのは神経障害性疼痛である. 癌疼痛治療の主軸をなすオピオイドには殆んど反応せず, 副作用に悩まされる. 癌患者のQOLを保持しながら痛みを除去するには, 癌性疼痛の発生機序の解明と新しい鎮痛薬の開発が急務である. 申請者らはグリシントランスポーター(GlyT)阻害薬および血小板活性化因子(PAF)受容体拮抗薬が脊髄後角でグリシン受容体α3機能を強化して下降性痛覚抑制系を賦活することで, 様々な病態生理学的疼痛を緩和することを見出し, 普遍的に有効な疼痛治療薬となる可能性を報告してきた. 本研究は, ①これら薬物の癌性疼痛治療における有効性, ②下降性抑制系の賦活を鎮痛メカニズムに含む薬物(オピオイド製剤等)との併用によるBiomedical Modulation等について検討し, 以下の結果を得た. ・がん性疼痛モデル動物にGlyTs阻害薬およびPAF受容体拮抗薬の投与(静脈内投与, 経口投与, 脊髄腔内投与)により, 長期間持続性の鎮痛効果を認めた. ・RNA干渉により, 脊髄のGlyTs, PAF受容体, グリシン受容体α3をノックダウンしても同様の鎮痛効果を認めた. ・GlyTs阻害薬およびPAF受容体拮抗薬は頻回投与しても薬剤耐性, 蓄積作用は認めなかった. ・GlyTs阻害薬およびPAF受容体拮抗薬は小量でモルヒネの鎮痛作用を著明に増強し, 副作用も大幅に軽減された. ・GlyTs阻害薬およびPAF受容体拮抗薬により生存率の著明な改善を認めた. ・PAF受容体拮抗薬の長期間持続する鎮痛効果にPAF受容体の内在化が関係することを明らかにした. これらの成果より, 難治性がん性疼痛に対するGlyTs阻害薬およびPAF受容体拮抗薬の有用性が実証された. これら薬物はターミナルケアにおける重要な薬剤としても位置づけられ, 臨床応用を目的としたトランスレーショナルリサーチへの展開が期待される.
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