研究課題/領域番号 |
22390350
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山本 健二 九州大学, 大学院・薬学研究院, 特命教授 (40091326)
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研究分担者 |
川久保 友世 九州大学, 大学院・薬学研究院, 特任助教 (70507813)
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キーワード | 感染症 / 酵素 / 細菌 / 歯学 / 薬学 |
研究概要 |
本年度は、(1)歯周病原因菌のジンジバリス菌感染に対する生体防御システムとしてのエンドソーム系蛋白質分解システムの役割、(2)歯周病と動脈硬化性心疾患の連関に関する分子機構の解明、および(3)ジンジパイン(RgpとKgp)に対する二元的阻害剤の開発の3つの課題について追究を行った。その結果、(1)については免疫機能と関係が深いとされるエンドソーム系酵素カテプシンE(CatE)がジンジバリス菌感染に対する生体防御システムで極めて重要な働きをしていることが明らかにされた。具体的には、CatEの発現量を異にする3種類の同系マウス(CatE欠損、野生型、CatE過剰発現マウス)とそれぞれに由来する抗原提示細胞を用いてジンジバリス菌感染に伴う生体機能変化を個体ならびに細胞レベルで解析した。その結果、本菌感染による個体死やマクロファージのアポトーシスはCatEの発現量と正の相関をすることが分かった。また、マクロファージの抗原提示能や殺菌能もCatEの発現量と正の相関をしていることが分かった。さらに、CatE欠損マクロファージでは、野生型やCatE過剰発現マクロファージに比べて過度の酸化ストレス負荷やオートファジー機能の不全が生じていることが明らかにされ、ジンジバリス菌感染に対してエンドソーム系蛋白質分解システムがCatEを介して生体防御システムに重要な役割を果たしていることが明らかにされた。(2)については、ジンジバリス感染がどのような機序で動脈硬化性心疾患の発症を促進するのかを、動脈性硬化性心疾患のモデル動物であるApoE欠損マウスを使って解析した。その結果、本菌感染が動脈硬化性心疾患の発症を著明に亢進すること、それがRgpとKgpを同時に阻害することによって強く抑制されることが明らかにされた。ジンジパインの阻害がどのようなメカニズムで動脈硬化性心疾患の発症を抑制するかを検討した結果、RgpによるLDLコレステロールのApoB-100蛋白質の分解がこれらの阻害剤によって強く阻害されることによって動脈硬化性心疾患の発症が抑制されることがわかった。(3)については、cDNAディスプレイ法を基盤とする高速分子進化技術によって取得されたジンジパイン阻害性ペプチドの中からRgpとKgpを同時に阻害する二元的阻害剤が数種類を選別した。選別されたそれぞれのペプチドに対してアミノ酸置換や側鎖付加等の修飾を施し、より高品質のペプチド性化合物の取得に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた4つの課題のうち、上記したように3つの課題については当初計画以上に進展したが、残る課題の「歯周病と糖尿病の連関に関する分子機構の解明」については、モデル系の確立に時間を要したため、当初の計画からやや遅れている状態である。したがって、全体としては「おおむね順調に進展している」と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画した課題のうち、上記の3つの課題は順調に進展していることから、今後もこれまでに確立している実験系を使ってさらに解析を進めることができると考えている。やや遅れの見られる課題については、動物モデル系がほぼ確立できたので、今後は他の課題でも活用してきた実験系を使って推進できると考えている。
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