研究概要 |
本研究は我々が見いだした腫瘍進展抑制性ケモカインBRAK/CXCL14の腫瘍抑制の分子機構を明らかにして, 新しい副作用のない癌のドーマントセラピー(休眠療法)開発の基礎を確立することを目的とする。我々はすでにケモカインBRAKは多機能分子であり, 複数の標的細胞, 作用点に働いて癌の抑制をしていることを明らかにした。本研究ではBRAKの腫瘍抑制作用の分子機構を明らかにするために以下の3つの項目に重点を絞って明らかにする。 (I) BRAK遺伝子の発現制御機構を明らかにする。(II) BRAKトランスジェニックマウスにおける移植癌の進展抑制機構を明らかにする。(III) BRAKの癌転移抑制機構を解明する。 (I)細胞密度依存的にBRAK遺伝子発現の促進が観察された。この促進にはカルシウム/カルモジュリンの活性化に伴い転写因子SP-1のBRAK遺伝子のプロモーター領域に存在するCGボックス配列への結合が必要であることが判明した。(II) BRAKトランスジェニックマウスにおける移植癌の進展阻害には、転移阻害と同様にナチュラルキラー(NK)細胞が重要な働きをしていた。(III) BRAKの癌転移抑制にインターフェロンγの関与が示唆されているが、細胞培養系ではBRAKの発現とインターフェロンγの共役効果は見いだされなかった。
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