研究概要 |
iPS細胞は、ES細胞のもつ倫理的問題を回避することを可能とし、創薬、難病治療や再生医療の発達につながっていくことが期待されている。iPS細胞樹立時に導入される4因子(c-Myc、Oct3/4,Klf4,Sox2)のうち癌遺伝子であるc-Mycが導入されることから細胞の癌化が懸念されたが、c-Mycを除くOct3/4,Klf4,Sox2の3因子の導入でのiPS細胞の樹立も成功し、研究が進められている。そこで本研究では、4因子と3因子導入マウスiPS細胞を用いた低酸素培養下での増殖・分化、骨芽細胞誘導時における影響について検討した。 理研CELL BANKより購入したマウスiPS細胞(iPS-MEF-Ng-20D-17,iPS-MEF-Ng-178B-5)を用いた。MEFを播種したDish上に、マウスiPS細胞を5日間FBS、2-Mercaptoethanoal、NEAA、mouseLIF、penicillin/streptomycin、bFGF添加DMEMで培養。継代後1.0×10^5cell/cm^2の密度で播種し、5%および21%O_2の条件下で7日間培養し、一形態学的観察に加え、RT-PCRにて未分化マーカーの遺伝子発現について検索を行った。また、3因子、4因子導入マウスiPS細胞を6wellDish上に1.0×10^4cell/cm^2の密度で播種し、5%および21%O_2の条件下で骨分化誘導培地および維持培地上で15日間培養した。3、7、12、15日目でそれぞれAhzarin-Red染色を行った。 4因子と3因子導入マウスiPS細胞どちらにおいても、低酸素条件下での維持は難しいことがわかった。 骨分化誘導培地における4因子と3因子導入マウスiPS細胞のAhzarin-Red染色の結果においても、有意な差は認められなかった。4因子と3因子導入マウスiPS細胞を比較して、低酸素条件下での培養で増殖・分化に有意差はないことが明らかとなった。骨分化誘導時においても、4因子と3因子導入での有意差はなかった。
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