研究概要 |
分化した細胞は一般に、正常細胞より大型で細胞周期が停止しているにも関わらずタンパク質の分泌能が亢進していると言われており、口腔粘膜上皮においても同様である。TASCC (TOR-autophagy spatial coupling compartment) がこの現象の一端を担っていることが示唆されているが、ヒト初代培養細胞におけるTASCCの詳細は不明である。TASCCは発達したオートリソソームとゴルジがつくるコンパートメントで、多くのmTORがコンパートメント内に集積し、オートファジーにより分解、生成された新規アミノ酸がmTORの活性を高め、新たなタンパク質の合成を促す重要な場と考えられている。そこで本研究では、口腔粘膜上皮細胞においても細胞が分化する際にTASCCが形成されるかどうかを形態学的に検討した。さらに、TASCCに関連して口腔粘膜上皮細胞から分泌されるたんぱく質が、臨床応用されている培養口腔粘膜の出荷前品質管理に応用できるかどうかの手がかりを検索した。 ヒト培養口腔粘膜上皮細胞を、培養口腔粘膜ヒト臨床応用プロトコールに準じて単層培養を行い、細胞組織化学的に、また微細構造学的に観察した。さらに、細胞が分泌する細胞分化と関連する各種タンパク質を定量し、TASCCと分泌量の相関を検討した。 mTOR, LC3, LAMP-2, p62, GM-130抗体を用いた2重染色によって、分化した培養口腔粘膜上皮細胞内にはTASCCの特徴と一致する陽性像が認められ、その存在が示唆された。さらに、分泌型の分化マーカーとTASCCの関連も検討した。
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