研究実績の概要 |
本研究は,生きた動物の口腔内などにおいて,多光子レーザーによって生きた細胞の細胞膜を傷つけ,LIVEイメージングによって細胞膜修復装置のリアルタイムの働きを明らかにすることを目的としている.この方法によって,生理的条件下での細胞膜修復装置に組み込まれているタンパク質の動態のその意義が明らかにされることが期待されている. これまでの実験により,GaAsP搭載型高感度多光子レーザー顕微鏡により,生体内、組織内、ならびに培養細胞のそれぞれの条件において、損傷した細胞膜修復時の様子をより詳しく解析することができた.GFP標識された培養細胞内のタンパク質, Dysferlin, MG53, Annexin-A1,-A2, -A4,-A5,A7およびMICAL-1の膜修復のための素早くダイナミックな動きの LIVEイメージングに成功した.分離筋線維または分離筋束内の膜修復の様子も詳しく解析することができ,今まで不可能であった損傷部に融合する素早い小胞の動きを撮影することができた.この観察により、損傷修復部から細胞外へ小胞分泌,エクトゾームの形成の瞬間をライブ撮影する事に成功した.膜損傷による過剰のCa2+流入によって,ゆっくりとしたカルパイン3の活性が確認された.またDysferlin欠損患者から作製したiPS細胞に,ヒト完全長Dysferlinを発現させ,分化筋細胞の膜損傷アッセイを行い,良好な膜修復結果を得ることができた。これらの手法に加え、遠心偏光蛍光顕微鏡を用い、細胞膜に強い重力負荷を与えながら、細胞膜が引き裂かれる様子のライブイメージングにも成功した。これらの結果は米国細胞生物学会,日本解剖学会、ならびにPLoSone誌などに報告した.
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