研究概要 |
低酸素状態において転写活性を促進する低酸素応答因子(HRE)を12個と、99mTcや放射性ヨードを細胞内に取り込むsodium-iodide symporter(NIS)レポーター遺伝子を持つベクターを作製した。作製したレポーターベクターをヒト大腸癌細胞株へ安定導入した。正常酸素および低酸素状態(1% O2,12時間)で培養し、99mTcの取り込み試験を行いNISの発現を確認した。正常酸素では99mTcの取り込みが低く、低酸素では99mTcの取り込みが最も高かった細胞株(HCT116-12HRE-hNIS)を選出し、in vivoでの実験で用いることとした。 樹立した細胞株をヌードマウス右脇腹部へ皮下移植し、腫瘍増殖を評価した。約3週間後に、腫瘍最大径約5mmの皮下腫瘍を形成した。この担癌モデルを用いて、SPECT/CTイメージングを行った。正常酸素状態(21% O2,n=5)で飼育した担癌マウスの腫瘍への99mTc集積と比較して、低酸素状態(10% O2,12時間,n=5)で飼育した担癌マウスの腫瘍への99mTc集積は、優位に高い値を示した。(1.09±0.31vs.2.05±0.65,p=0.001) 撮像後、腫瘍を摘出し病理学的評価を行った。低酸素状態を抗pimonidazole抗体で、低酸素に対する遺伝子レベルの反応を抗NIS抗体で、それぞれ免疫染色を行った。その結果、イメージングの結果とNISの発現との間に強い相関を認め(R=0.86,p=0.003)、99mTc集積はNISの発現であることが確認できた。またpimonidazoleの染色部位とNISの染色部位との乖離が認められた。このことは、今後さらなる実験を行い、検討する必要がある。
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