本研究では、独自開発ハイブリッド型リポソームの腫瘍特異的吸着性を利用して、イメージング機器の高性能な新規の増感剤、造影剤、ターゲット分子を開発することを目的とする。これまで、増感剤内包リポソームの一つとして開発してきたヨード系造影剤を内封したポソームに加え、今年度は、in vivoの蛍光検出器(IVIS)を用いて、GFP標識リポソームの開発を行った。 まず、GFP蛋白を内封したリポソームへ腫瘍特異的吸着性を示すンドビスウイル(SIN)成分をハイブリッドしたGFPタンパクリポソームを作製し、in vitroで癌細胞へ添加し、蛍光観察を行ったが蛍光検出は得られなかった。そこで、導入後発現が増すGFPベクターを内封したGFPベクターリポソームを作製し、in vitroで癌細胞へ添加したところ、24時間後に最大の蛍光を示し、次に、担癌マウスへ投与したところ蛍光検出度は低かった。このことから、検出器の感度が低いことや、蛍光検出できるだけのタンパクを内封する効率が低いこと、in vitroでは腫瘍内へのベクター導入率が低いことなどの問題点がわかり、蛍光標識リポソームの使用にはイメージング器の改良も必要であることが分かった。これと同時に、昨年度までにヨード剤の内封率を向上させた造影剤リポソームに、SINをハイブリッドする条件を検討し、48時間後にも安定している造影剤リポソームを作製した。精製後の造影剤リポソームのヨード濃度は30mg/mlであり、CT値は350であった。in vivoで背部担癌マウスへ投与2時間後、コントロールリポソームと造影効果を比較し、腫瘍部位で40%増加し、肝臓、腎臓、心臓、脾臓では有意な増加はなかった。また、顕著な副作用も現れなかった。以上から、造影剤リポソームは汎用機器であるCTで増感率が上がるため、臨床応用が期待できた。
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