研究課題
申請者らは、これまでに培養唾液腺上皮細胞を再生唾液腺中に移植し、この移植細胞が腺組織中に生着することを示した。一方、これまでに共同研究機関において唾液腺中の幹細胞分画が動物の正常唾液腺から分離可能であることが報告されている。本研究の長期的および最終的な目標は、放射線治療による唾液腺機能障害と口腔乾燥症状に苦しむ患者に対して、培養唾液腺幹細胞の自家移植による新たな治療法を確立することである。そのために、われわれは唾液腺幹細胞の分離培養、評価技術の確立とともに、放射線による唾液腺機能障害に対する治療への応用の可能性について検討を行っている。本研究における目的の一つは、唾液腺からのサンプルを用いて、幹細胞の分離、培養、クローニングおよび保存法を検討し、確立することである。特に、磁気ビーズ(MACS^<TM>)を用いた高純度の唾液腺細胞の分離培養方法を確立することで、放射線治療後に使用することが可能と考えられる。唾液腺幹細胞分離のためのマーカー候補としては、α6/β1インテグリン、c-kitおよびSca-1が知られている。これまでMACSによる抗α6/β1インテグリン抗体を用いた幹細胞分画の分離については報告されているが、c-kitおよびSca-1陽性分画の分離については報告されていない。われわれは、抗c-kitおよび抗Sca-1抗体を用いたさらなるenrichの可能性について検討を行った。単離唾液腺細胞には血球由来細胞が多く含まれるため、初めに抗TER119抗体を用いた血球由来細胞の分離を行った。フローサイトメトリーによる解析では、Sca-1陽性細胞は血球を除いた細胞分画中の2-8%、c-kit陽性細胞は1%前後と僅かであった。c-kit陽性分画をMACSにて分離し、分離細胞をゲル中に包埋することで、sphere形成およびbranchingが認められた。
すべて 2010 その他
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