本研究では、従来の治療法では制御困難な口腔癌症例に対する有用な免疫療法を探索した。まず、口腔癌治療に適した免疫アジュバント製剤(非特異的免疫療法)の同定を試みた。レンサ球菌製剤OK-432の活性成分(リポタイコ酸関連分子OK-PSA)はToll-like receptor (TLR) 4/MD-2複合体を介して抗腫瘍免疫活性を発現することが知られている。そこで、ヒト口腔癌細胞に対するOK-PSAの効果につき検索した。最初に、ヒト口腔癌細胞12株を用いてTLR4およびMD-2遺伝子発現をリアルタイム定量化PCR法にて検索した。次に、各癌細胞をOK-PSAで処理し、生細胞数をMTT法、アポトーシスをTUNEL法、Caspases活性をCaspase assaykitにて検索した。その結果、TLR4発現細胞は全株、MD-2発現細胞は5株であった。これらの細胞株においてOK-PSAは増殖抑制効果を示し、さらにCaspase-1および-8を活性化しアポトーシスを誘導した。よって、OK-432はヒト口腔癌細胞に対する直接的な抗腫瘍活性が期待できるため、口腔癌治療に有用な免疫アジュバント製剤であることが示唆された。つづいて、口腔癌免疫治療に有用な癌抗原の同定を試みたところ、ヒト口腔癌細胞株を用いたマイクロアレイ解析にて既知の癌抗原としてWilms tumor 1、Aurora kinase A、Mucin 1、Survivinの発現が明らかとなった。また同時に、ヒト口腔癌細胞および口腔癌組織におけるHuman leukocyte antigenの発現を確認した。以上の結果は、口腔癌の治療として特異的および非特異的免疫療法が適用できる可能性を示した。
|