本研究では口腔癌における有用な癌抗原を探索した。ヒト口腔癌細胞株を用いたマイクロアレイ解析にて既知の癌抗原として Wilms tumor 1 (WT1)、 Aurora kinase A、Mucin 1 (MUC1)、Survivin の発現が明らかとなった。同時に、ヒト口腔癌細胞および口腔癌組織における Human leukocyte antigen の発現を確認した。WT1 および MUC1 は固形癌における有用な癌抗原としてすでに報告されているため、口腔扁平上皮癌組織 50 検体、ヒト口腔扁平上皮癌細胞 5 株を対象に定量化リアルタイム RT-PCR 法で WT1、MUC1 mRNA の発現を検討し、さらに口腔扁平上皮癌組織 14 検体、ヒト口腔扁平上皮癌細胞 5 株を用いて Western blotting 法、免疫組織化学染色法により MUC1 の蛋白質発現を確認した。口腔扁平上皮癌 50 検体中 1 例 (2%) にのみ WT1 mRNA の発現が認められたが、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株全てにおいて WT1 mRNA の発現は検出されなかった。一方、MUC1 mRNA は口腔扁平上皮癌組織および細胞株全てにおいてその発現が確認されたが、Western blotting 法においては MUC1 蛋白質の発現は口腔扁平上皮癌組織 14 検体中 7 例 (50%) に、免疫組織化学染色法では 14 検体中 11 例 (78.5%) に認められ、口腔癌における有用な癌抗原としては MUC1 が示唆された。
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