研究課題
固形がんにおいては、腫瘍内に低酸素領域が存在し、がんの悪性化に強く関与していることが多くの領域のがんで報告されているが、口腔がんでは詳細な報告がほとんどない。本研究では、口腔扁平上皮癌細胞が低酸素環境におかれることにより、wnt/βカテニン経路が活性化し、がんの浸潤・転移能の獲得に関与していること、さらに低酸素環境が抗がん剤耐性の原因の一つであることを明らかにした。口腔がん細胞を低酸素環境におくと細胞膜でのEカドヘリン、βカテニンの発現が減少し、βカテニンは細胞質や核へ移行した。これに伴い間葉系マーカーであるVimentinやSnailの細胞内での発現が増加した。これは、口腔扁平上皮癌細胞が低酸素環境で上皮間葉転換をおこしていると考えられ、浸潤、転移能を獲得する重要な機序の1つであることが示唆された。これは、腫瘍組織においてβカテニンの細胞膜発現が減弱した群が有為に予後不良になることの分子生物学的機序の1つと考えられた。また、化学療法感受性についてついての検討では、口腔扁平上皮癌細胞では、通常酸素環境下と低酸素環境下で、それぞれCDDPの量に対して異なる応答を示すことが解った。口腔扁平上皮癌細胞では低酸素環境下でグルコース輸送体タンパク質-1(GLUT-1)の発現上昇を認めた。さらに、グルコース輸送体タンパク質-1(GLUT-1)の発現とCDDP感受性に負の相関関係があった。口腔扁平上皮癌細胞において、通常酸素環境下と比較して低酸素環境下ではGLUT-1ノックダウンしてCDDP処理をすると、アポトーシスの増加をもたらす結果となった。これらのことから、低酸素環境におけるGLUT-1の発現が、抗がん剤耐性に関与していることが示唆された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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