研究概要 |
小児歯科に来院する患者には歯の形成不全を有する患者は比較的多く、なかでも遺伝性エナメル質形成不全症は全顎的にエナメル質形成が損なわれ、審美的な障害はもちろん、重篤な知覚過敏や咬合の崩壊など罹患患者に大きな不利益をもたらす。エナメル質形成不全症は遺伝性疾患である。研究開始前に東京歯科大学倫理委員会において承認を受け(承認番号252)、その規約に基づき,患者に研究の主旨と目的,方法および得られた結果の発表方法など,十分な説明を行ったのち,その同意のもとに粘膜からのDNAを増幅する方法を採用した。すなわち,サンプル採取用のコーンを患者の頬粘膜に擦りつけ,スワブ資料を採取した。このスワブに付着した細胞片からPuregene® Kit C(Qiagen, Hilden, Germany)を用いてゲノムDNAの抽出を行った。抽出された微量DNAはPCRを行って増幅し,ダイレクトシーケンスに供し、エナメル形成不全症患者において、AMBN、AMELX、AMTN、DLX3、ENAM、FAM83H、KLK4、MMP20およびWDR72遺伝子翻訳領域とスプライス部位およびアメロブラスチン遺伝子のプロモーター領域の調査を行った。その結果、12か所の変異を確認するに至った。ENAM遺伝子に見つかったアミノ酸残基がProからLeuに置換する変異(P724L)以外の変異は同義置換や過去に報告された遺伝子多型であった。ENAM遺伝子に見つかったP724L変異はエナメル質形成不全症の原因となる変異である可能性がある。
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