研究課題/領域番号 |
22390396
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
吉江 弘正 新潟大学, 医歯学系, 教授 (20143787)
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研究分担者 |
小林 哲夫 新潟大学, 医歯学総合病院, 准教授 (00215344)
久保田 健彦 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (50303136)
小松 康高 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (40422597)
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キーワード | 歯周炎 / リウマチ / インターロイキン6 / ゲノム / エピジェネティクス |
研究概要 |
本研究の目的は、歯周炎患者においてインターロイキン6(IL-6)領域でエピジェネティクスが生じているかを、末梢血細胞ならびに歯肉組織細胞を対象に解析することである。 昨年度は第1段階として歯周炎患者群20名、関節リウマチ(RA)患者群20名、健常者群21名の末梢血単核細胞のメチレーション解析し、-74bpおよび+19bp部位のメチル化頻度において3群間で有意差が認められた。そこで、本年度は第2段階として、インフォームドコンセントが得られた歯周炎患者11名ならびに健常者2名を対象に、IL-6遺伝子のゲノムメチル化頻度を血清と歯周組織局所とで比較した。 歯周炎患者では歯周外科処置の際に通常廃棄する歯周組織片を採取し、同時に末梢静脈血も採取した。また、健常者は高度う蝕罹患歯の抜歯時に付着する歯周組織片を採取し、同時に末梢静脈血も採取した。 歯周組織片および末梢静脈血からゲノムDNAを抽出した後にバイサルファイト処理を行い、IL-6遺伝子プロモーター領域のプライマーを用いてPCR増幅後、ダイレクトシークエンスにて塩基配列を解析した。 その結果、IL-6遺伝子プロモーター領域のCpGのうち、歯周炎患者群では5部位(-1099bp,-1094bp,-1069bp,-1001bp,-227bp)において血清と歯周組織とでメチル化頻度が異なっていた。-1099bp~-1001bpの4部位のメチル化頻度が血清では100%であったのに対して、歯周組織では非メチル化が一部認められた。一方、健常者群では2名ともすべてのCpGでのメチル化頻度は一致していた。 非メチル化によってIL-6遺伝子の発現活性は高まりIL-6産生が促進されることから、今回の結果より、歯周組織局所ではIL-6遺伝子の活性が高まり、その結果として、IL-6産生促進による炎症が惹起されている可能性が示唆された。これらの結果は、IL-6遺伝子プロモーター領域のメチル化解析が、将来的に、歯周炎感受性診断の一助になることを示唆しており、歯周炎の診断学において重要な所見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度、23年度の2年間で、歯周炎患者とリウマチ患者の末梢血細胞におけるIL-6プロモーター領域のメチレーション解析が終了し、国際論文も掲載あるいは受理となっており、全体計画のほぼ6割を達成したため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、歯周炎患者、リウマチ患者、健常者の例数を増加して、歯肉組織におけるIL-6遺伝子のゲノムメチル化頻度をを解析していく予定で、当初の研究計画とほぼ同一である。しかし、THP-1細胞をP.gingivalis成分と培養して、メチル化部位を特定しインピトロの結果は、安定せず臨床サンプルとは異なった結果となっており、培養条件、刺激条件を変えて、最適の条件を今後検討していく予定である。
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