研究概要 |
本研究の目的は、全身と局所にIL-6髙値を示す歯周炎患者においてエピジェネティクスとして、DNAメチル化ならびにゲノムの後天的修飾が生じているかを、末梢血細胞および歯肉組織細胞を使用して解析を行うことである。 本年度は最終年度として、インフォームドコンセントが得られた歯周炎患者15名、健常者10名を対象に末梢血液および歯肉組織を採取し、血液単核細胞と歯肉組織由来ゲノムDNAのIL-6遺伝子プロモーター領域のゲノムメチル化強度を比較した。 歯肉組織片および末梢血液からゲノムDNAを抽出した後にバイサルファイト処理を行い、IL-6遺伝子プロモーター領域のプライマーを用いてPCR増幅後、ダイレクトシークエンスにて塩基配列を解析した。 今回の結果、IL-6遺伝子プロモーター領域の計19のCpG部位のうち、両群の血液・歯肉組織とも9CpG部位(-1099 bp, -1096 bp, -1094 bp, -1069 bp, -1061 bp, -1057 bp -1001 bp, -491 bp, -227 bp)においてメチル化を検出した。-491 bpにおける健常者群の歯肉組織のメチル化強度は血液の場合と比べて有意に低下していた。同様に、歯周炎患者群の歯肉組織のメチル化強度も血液の場合と比べて低下傾向にあった。IL-6遺伝子プロモーター領域メチル化強度の低下によってIL-6遺伝子発現活性は高まりIL-6産生が促進されることから、今回の結果より、歯肉組織では末梢血液と比べてIL-6遺伝子活性が高まり、IL-6産生促進による炎症惹起の可能性が示唆された。したがって、IL-6遺伝子のエピジェネティクス解析は、歯周炎の新たな病因論に寄与する可能性が考えられる。
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