研究概要 |
【目的】歯周病原細菌に対する血中IgG抗体価検査の精度向上のため,全菌体抗原の中から歯周病患者が認識する抗原成分を選抜し,抗体価検査に応用可能な合成タンパク質を構築した。さらに,同タンパク質と患者血清との反応性を検討し,同タンパク質の高速自動化した検査への応用を目指した。 【材料および方法】1.抗原タンパク質の精製及び同定・合成・評価:歯周病患者プール血清を用いたイムノアフィニティカラムによって,抗原調製液(Porphyromonas gingivalis FDC381株菌体破砕液)を粗精製し,MS解析にてタンパク質を同定した。同定タンパク質の遺伝子からコムギ無細胞系タンパク質発現システムによってタンパク質を合成し,健常者と患者血清に対する反応性をドットブロット法にて調べた。2.検査自動化のための反応系構築:東洋紡の抗体反応用メンブレンを用いて,合成タンパクを固相化後,同社試作中の検査機器で血清IgGとの反応性を調べた。一方で,理化学研究所の伊藤嘉浩博士が開発した光固定によるELISA反応系で,粗抽出タンパクと血清IgGとの反応性を調べた。 【結果および考察】患者血清との反応性が強い16種類の合成タンパク質を選出して,一部を用いてメンブレン上に固相化したもので,IgG抗体価を測定したが,シグナルノイズ比が高く,反応性もやや低めとなった。今後は,固相化の際にアビジンとビオチンの反応の度合いを調整するなどして,抗源の立体構造にも配慮しなければならない。なお,この傾向は,粗抽出抗原を光固定によってELISAを行った理研式の方法で,立体構造の変化の関与を示す顕著な影響が出た。そこで,合成タンパクを用いることと,それを適切な長さに切断して用いるなどして,立体構造の変化が抗原性に影響を与えにくい固相化を検討する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
想定した検査系に持ち込んで,予定とおりに一通りの測定を試みた。しかし,シグナルノイズ比が高く,且つ,反応性が低下するという結果となった。この意味では,やや遅れ気味ではあるが,想定以上の方法を取り入れた検討も行えて原因を追及できたので,概ね順調に進展していると判断した。
|