研究概要 |
1.病変部面積の分析結果から、A.a.生菌,>A.a.死菌体>A、a.LPS感染群の順でPBS投与群に比較して有意な動脈硬化の早期発症、促進が認められた。更にA.a.生菌やLPSの投与により大動脈でのTLR-2,-4,-9およびNOD-1,-2の発現増加が認められた。 2.A.a.およびP.g.感染群においては、血中におけるHSP60、HSP60抗体、酸化LDL、酸化LDL抗体の増加が認められ、病変組織においてはLOX-1,HSP60,NOX-1,NOX-2,NOX-4及びp47phox遺伝子の発現増加が認められた。更に組織染色ではA.a.およびP.g.感染群共に4HNE、HSP60、Myeloperoxidase、Phospholipase A2、酸化LDLおよびCD36陽性が顕著であった。 3.Flow cytometryやRT-PCRおよび定量PCRの結果からP.g.感染群においては血中Th17細胞誘導サイトカイン(TGF-β,IL-6,IL-21)の増強ならびにIL-17+T細胞やIL-21+T細胞の増加が認められ、更に局所でのRORγtやSTAT3遺伝子の発現増強が認められた。 4.P.g.HSP60発現ベクターを大腸菌に形質転換後、大量培養し、得られた菌体からアフィニティークロマトによりHSP60を精製した。P.g.HSP60精製タンパク質を抗原とし、CEAと共に筋注投与した所、P.g.HSP60に対する著しい抗体価の上昇が認められた。 以上の結果から歯周病原細菌感染による動脈硬化の進展には、菌の動脈硬化巣への直接効果のみならず、LPS等の菌体成分の影響も関与し、TLRやNLR、酸化ストレスやHSPの発現に影響を与えていることが示唆された。更に抗酸化物質投与や自己抗原による免疫応答がこれらの炎症に基ずく動脈硬化機序を抑制し、予防・治療に有効である可能性が示唆された。
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