研究概要 |
急性心筋梗塞の医療連携はわが国の重要な施策となっている。近年,主に欧米で歯周炎が冠動脈疾患のリスク因子となることが示唆されている。しかし,人種の異なるわが国においても,同様の関連がみられるかどうかは不明である。本研究の目的は,わが国において,歯周炎が冠動脈疾患のリスク因子となるか否かを明らかにすることである。特に,循環器科の医師,歯科医師および歯科衛生士が一堂に会し,冠動脈疾患患者の治療において,医科歯科連携を促すようなガイドラインの作成をめざす。また,歯周炎と冠動脈疾患との関係を活性酸素種の点から検討する。 平成22年度は,口腔内状態,冠動脈疾患のマーカー,および活性酸素種との関係を記述疫学的に明らかにするために,日本大学練馬光が丘病院循環器科の患者を対象に口腔内診査および血清の酸化ストレス度・抗酸化力を測定した。42~82歳(平均67.2歳)の31名(男性24名,女性7名)のデータを収集した。2005年歯科疾患実態調査結果と比較すると,現在歯数はほぼ同じ(40~50歳代),または多い(70歳以上)傾向にあった。一方,歯周炎有病者率は歯科疾患実態調査よりも明らかに多く,40~70歳代では100%であった。 予備的に分析を行った結果,現在歯数の少ない者には高血圧症有病者が多い傾向にあった。また,平均歯周ポケット深さが深い者ほどフィブリノーゲンが高かった。酸化ストレス度はフィブリノーゲン,高感度C反応性タンパク,酸化LDLおよびAnkle Brachial Index(足関節/上腕血圧比)との相関が強かった。これらの結果から,現在歯数や歯周炎の程度と高血圧や血管の狭窄との関係が明らかになり,それらに加えてさらに酸化ストレス度も関連していることが示唆された。今後,さらに例数を増やして,これらの結果を含めて検証を行う予定である。
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