研究概要 |
H22年度は,以下の研究活動を行った。 第1に,新たにスタートする本科研の重要概念である,情報プライバシーと患者の尊厳について,先行して行った研究成果(患者情報プライバシー認識尺度の開発)の再検討および新たな系統的な文献検討を行ない,(1)患者の情報プライバシーを患者の尊厳を構成する要素の一つとしてとらえること,(2)患者の尊厳を看護が守るためには,患者自身の尊厳についてのニーズを把握する必要があること,(3)尊厳についてはさまざまな定義があるが,患者への敬意・尊敬,患者のプライバシー,患者による選択とコントロール,時間的な余裕,そして,人間性の各視点から患者の尊厳をとらえて尺度開発を進めることとした。第2に,患者の尊厳とプライバシーについて,有識者からの意見の収集と情報交換を行うためのオンライン上のフォーラムのデザイン設計を行い,プロトタイプを作成し,運用試験を行った。第3に,国際版の尺度とするには,日本語版ではなく英語版についてその信頼性,妥当性を検証する必要がある。このため,英語を理解する患者が多くいると予想されるシンガポールでパイロット調査を行うこととし,そのための研究打合せをシンガポール大学の研究者,国立病院を管理する厚生省の担当者らと行った。第4に,上記パイロット調査のための尺度原案(日本語版)を構築するために,(1)看護師を対象とするアイテムプールのためのフォーカスグループインタビュー,(2)患者を対象とする質問紙調査を計画し,そのための質問紙を作成し,所属機関の研究倫理審査の承認を得た後,調査準備に取りかかった。なお,研究協力が得られた対象への調査はH23年4月以降に実施することとなった。第5に,関連する成果の発表と患者の尊厳とプライバシーに関する有識者との情報交換のために,国内学会およびMEDINFO2010 in Cape Townで発表を行った。
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