研究概要 |
H25年度のイギリスでの調査のために,英国内の看護倫理に関心のある研究者や大学院生を交えたセミナーを開催し,シンガポールでの調査結果に基づくiPDS第1版について見直しを行った。その中で,民族・文化の違いなどにより,イギリスにおける調査では,修正あるいは削除が必要な項目があることが明らかとなり,一部項目の表現の見直しと英国内の事情にそぐわない1項目を削除した修正版を用いた調査を行っている。対象は,1施設ではあるが,500名の入院患者を対象とする調査である。項目分析とデータの精選を行った300件のデータについての解析結果であるが,尊厳に配慮したケアへの満足度は,シンガポール調査の結果とほぼ同じ5因子(クローンバックα=0.938)F1: respect for privacy , F2: respect for personal feeling and time, F3: respect for autonomy, F4: respect as a human being, F5: respect for fairness で構成されていることを確認している。尊厳への期待については,シンガポール調査結果のespect for privacyとrespect for fairness が,respect for privacy and fairnessとして1つの因子として統合されていることを除けば,その他の因子については概ね同じ構造(クローンバックα=0.948)となっている。基準関連妥当性の確認のために用いたRosenbergの自尊心尺度とは,明確な相関が見られず,自尊心も尊厳の構成要素の一つであるとされているが,入院患者にとってはこれらが区別されて捉えられている可能性が示唆された。
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