研究課題/領域番号 |
22390408
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤本 悦子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00107947)
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研究分担者 |
安藤 詳子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60212669)
寳珠山 稔 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30270482)
今井 常夫 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80252245)
有田 広美 福井県立大学, 看護福祉学部, 准教授 (30336599)
大島 千佳 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30405063)
永谷 幸子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90452200)
佐伯 街子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60610756)
間脇 彩奈 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10533341)
福山 篤司 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40452198)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | リンパ浮腫 / MRI / 複合的療法(CDT) / 赤外線観察カメラシステム / インドシアニングリーン(ICG) / リアルタイム / in vivo |
研究概要 |
本研究は、ヒトを対象としたMRIを用いた検討とリンパ流をリアルタイムで観察する蛍光ー赤外線カメラシステム用いた動物実験の2つのアプローチで行い、両方の成果を統合して、新しいリンパ浮腫ケアプログラムを作成しようとするものである。 ヒトについての成果:腋窩リンパ節郭清を伴う乳がんの手術後にリンパ浮腫を発症した女性3名に対して4~5週間の複合的治療(CDT)を行った。本年度はその前後の状況をMR画像と周囲径測定、自覚症状(VAS)から解析し、以下のことを明らかにした。 1.介入前のMRIの脂肪抑制画像とFLAIR画像から、自由水の貯留は患側の前腕尺側に認められた。上腕には顕著な自由水は認められなかった。2.患肢の自由水は被験者全員において介入後に減少し、自覚症状も程度の差があるものの全員が改善した。これらのことからCDTがリンパ浮腫のケアとして有効であることが示唆された。3.MR画像を用いて測定した皮下組織の厚さを左右の前腕で比較した結果、被験者全員において、患側の方が健側よりも厚かった。リンパ浮腫に起因する肥厚であると考えられる。4.周囲径の変化はMR画像と巻尺で測定したものでは一致しなかった。自由水として描写される組織間液の変動は巻尺による測定結果へ敏感に反映しないことが明らかになった。 動物についての成果:作成したリンパ浮腫ラットでは、鼠径リンパ節摘出手術後に、その末梢側に瀰漫状に広がる蛍光シグナル(リンパ)が認められた。また分水嶺を越えて鼠径部から腋窩部へ流れる新たなリンパ流が、線状の蛍光シグナルとして観察された。鼠径部の皮膚切開部位では、網目状になってこれを乗り越えるた。このラットにCDT(リンパドレナージと多重包帯による圧迫) を2週間、浮腫下肢に施行したところ、下肢に停滞していたの蛍光シグナルが減少した。また周囲経も減少した。CDTの有効性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ICGを使ったリンパ研究の競争から、本年度はラットを使った研究の方を急がせる必要が生じ、急遽ラットを使った研究に体制をシフトした。この研究は、当初の予定以上に進み、2つの論文としてまとめることができた(Lymphology、SpringerPlus:ともにin press)。 一方で、MRIを使ったヒトを対象とした研究については、患者のリクルートが遅れ、症例数を増やすことが困難になった。しかし、少数ながら、実際に患者にCDTを施行した結果を解析することができた。この成果は、国内の学会(日本看護技術学会第11回学術集会)で発表した。また前年度に見出した特異的な水分の貯留部位についても、本年度に発表した(第38回日本看護研究学会学術集会)。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、主としてヒトを対象とした研究を推進する。 現在までに見出した所見、すなわちリンパ浮腫を来たした上肢における“水分の特異的な分布”が、一般的なものであるのかどうかを、MRIで明らかにする。このために、被験者数を増やす予定である。さらにコントロールとなる健康な上肢との水分量の差を見るために、InBodyを用いて水分量、脂肪量を部位別に測定する。 CDTの効果についてもヒトにCDTを施行し、その前後でMRI画像、InBodyのデータを得て、解析する。 研究成果をまとめ、国際学会およに国際誌で発表する。また、ラットからの研究成果を加味して、新しいリンパ浮腫ケアの方法を勘案する。
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