研究課題/領域番号 |
22390423
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
樗木 晶子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60216497)
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研究分担者 |
川本 利恵子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40144969)
中尾 久子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80164127)
宮園 真美 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10432907)
竹本 真生 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90403998)
肥後 太基 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10457426)
井手 友美 九州大学, 大学病院, 講師 (90380625)
砂川 賢二 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50163043)
筒井 裕之 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70264017)
長谷部 直幸 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30192272)
樗木 浩朗 保健医療経営大学, 保健医療学部, 教授 (70607093)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 温熱療法 / 心不全 / 代替療法 / 脳波 |
研究概要 |
昨年度に引き続き九州大学、北海道大学、旭川医科大学において入院中の心不全患者を対象としたフットサウナの短時間使用による血行動態や睡眠に対する効果を検討した。 九州大学では今年度までの症例数は心不全患者34例 (男性22人、平均年齢:57±15歳) に増えた。北海道大学でも5症例の検討がなされた。膝下を遠赤外線足温器(フットサウナ)を用いて暖めることにより、皮膚温は平均1.0度、深部体温は平均0.4度上昇したが、血行動態の有意な変化は無く安全に温熱療法を行う事ができた。45℃の加熱15分に加えて保温30分の45分間の使用を3日間就寝前に連用する事によって、その前後での血中生理活性物質(脳性ナトリウム利尿ポリペプチド:BNP)などの測定と血流依存性血管拡張反応検査(FMD検査)を行った。また、睡眠に対する効果は一般的な睡眠調査票であるOSA睡眠調査票、セントマリー病院睡眠質問票により使用前と使用後3日間の調査を行うとともに客観的な検討のために簡易型ポリソムノグラフィー (フィリップス社製 Alice PDx) によって睡眠中の脳波も検討した。3日間の連続使用で心不全増悪の指標のひとつであるBNPと血管拡張機能の指標であるFMDの改善が見られ、睡眠調査では夢見などにおいて改善をみた。脳波では浅睡眠が減少し、より深い睡眠へと移行していた。以上の結果から膝下をフットサウナで温めることにより全身の体温が上昇し、安定した血管内皮機能の改善や睡眠改善効果が得られると考えられた。現在、旭川医科大学においてもポリソムノグラフィーを用いて温熱効果が睡眠に及ぼす効果を検討中である。今後、心不全患者が自宅でフットサウナを長期使用した時にどのような効果が見られるか検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
九州大学が中心となって研究を遂行しているが、九州地区での症例を増やすために昨年度から保健医療経営大学を追加し、寒冷地での効果を検討するために北海道大学と旭川医科大学に分担研究を依頼している。九州地区でのフットサウナを施行した症例数は29例となり、当初の計画 (目標症例数30例) どおりに進行しているが、分担研究施設での実施症例数(各施設の目標症例数15例)が予定より遅れている。しかし、北海道大学で施行された心不全患者5例においてもフットサウナの効用が九州地区と同等に見られており、病院内の生活環境ではフットサウナの効用に有意な差は見られていない。また、旭川医科大学でもポリソムノグラフィーによる睡眠の検討を開始していおり、今後の症例の蓄積に期待している。来年度にむけた外来での長期フットサウナ使用介入研究の準備もすすみ、この点では順調に進行している。また、業績欄に詳細は記しているが、本研究を国際誌(Internal Medicine 51:2263-2270, 2012)に発表でき、日本循環器学会、日本生体医工学会、日本循環器病予防学会、日本看護科学学会などで発表する事ができた。以上の理由より「(2)おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は睡眠に対する3日間のフットサウナ使用による温熱効果をアンケート調査だけでなく客観的な指標としての脳波も計測したが、来年度は40症例に向けて病棟での心不全患者での検討を蓄積する予定である。それと同時に、来年度は温熱療法の長期効果を検討するために心不全が安定している外来患者において1か月間フットサウナを使用し、その前後で睡眠時無呼吸検査に使用される簡易型睡眠モニター装置を用いて温熱の睡眠に対する効果や血流依存性血管拡張反応に対する効果、心不全に対する効果(血中生理活性物質)を検討する予定である。これにより、心不全患者に対するフットサウナの家庭での補助・代替療法としての有用性を確立する事ができ本研究の最終的な目的を達成することができる。国際誌への投稿も行う予定である。また、北海道大学、旭川医科大学での研究遂行を円滑に行えるように連絡を密に取りながら今後も共同研究を継続してゆく。
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