本研究は、精神障害者のセルフケア能力を評価する尺度の開発を目的としている。そのために、まず国内外の看護領域のセルフケアに関する文献を収集し、セルフケアの概念分析を行った。さらに国内外の精神障害者の日常生活能力に関する測定用具を収集し質問紙を構成している概念や要素を抽出し検討した。その結果、本研究においては、単に日常生活の自立度を測定するような質問紙ではなく、セルフケア能力とセルフケア行動を統合して測定することができる質問紙の開発を目指すこと、精神障害者の場合、セルフケア能力のなかでは自己決定能力が最も重要とされているが、その他、内省や行動に移す力、実施するエネルギーなど、自己決定能力以外のセルフケア能力についても注目し検討していく必要があることを確認した。 Orem-Underwoodのセルフケア理論に基づく評価尺度の開発にあって、研究の進め方について検討するために、Underwood博士とのセミナーを開催した。そのなかで、日本におけるOrem-Underwoodのセルフケア理論の発展のしかた、理論導入に当っての問題点についての説明がUnderwood博士からあり、Underwood博士自身が1980年代に米国で開発したSelf-care Assessment Toolの原本を検討する必要のあることを確認した。 以上をふまえ、平成22年度は、Underwood博士が開発したSelf-care Assessment Toolの原本を日本語に翻訳して再検討し、現在の日本の医療状況、文化の違いを考慮しながら、日本版Self-care Assessment Toolの案を作成した。
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