研究課題/領域番号 |
22390444
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
松岡 千代 佛教大学, 保健医療技術学部, 教授 (80321256)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | トランスレーションリサーチ / 老年看護 / EBP / 介入研究 |
研究概要 |
1.TRIP介入の実施と効果評価 【EBPトピック】として高齢入院患者のせん妄ケアを取り上げ、TRIP介入モデルに従って多面的介入を行い効果評価することを研究の目的とした。一般病院2病院を対象として、まず看護管理者への講演会開催とニュースレターの発行による【社会システム】への介入を行った。次に病棟EBP普及を担うせん妄ケア担当看護師(研究対象者1)に対する【コミュニケーションプロセス】への介入として、せん妄予防ケアの講義、ガイドラインとクイックリファレンスガイドの検討、病棟への普及方法に関するディスカッションを実施した。EBPの【利用者】である病棟看護師(研究対象者2)に対して、研究対象者1を通してクイックリファレンスガイドの配布と病棟内での学習会開催を行った。介入効果として【EBPアドヒアランス】を設定し、研究対象者1・2に対してせん妄ケアへの意識と知識テスト、EBPへの意識に関する質問紙調査を介入前後に実施した。また高齢入院患者の入院後1週間のデータ収集を行い、TRIP介入前・中・後のせん妄発症率の変化について比較することとした。効果評価の結果については現在分析中である。今後はTRIP介入の実施プロセスの検証と、効果評価の結果分析をとおして日本版TRIP介入モデルを提案を試みる。 2.成果発表等 昨年度の成果については、第8回Biennial Joanna Briggs International Colloquium (Thailand)で研究発表を行い、また第23回Honor Society of Nursing, Sigma Theta Tau International (Australia)に参加し、TRIP介入モデルの開発元であるIOWA大学病院の看護研究者から研究実施に関するコンサルテーションを受け、今後の日本におけるTRIP介入の普及に関する示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、トランスレーションリサーチの手法を活用して、一般病院におけるエビデンスに基づく老年看護実践の普及を図り、その効果を測定し応用に向けての評価をすることを研究の目的としている。この目的を果たす前段階として、平成22~23年度には、EBP情報環境の整備、看護師のEBP情報アクセスと利用の向上を目指した教育的介入を行い効果評価を実施した。その結果、質問紙調査による評価で一部の効果は認められたが、教育的介入の方法に一部課題が残ることが示された。平成24年度は、本研究の主要目的である、TRIP介入モデルに基づく介入を行った。具体的には、EBPトピックをせん妄予防ケアとして2つの一般病院においてTRIP介入を実施し、その効果評価を行っている。詳細は研究実績の概要で示したとおりである。 本研究の全体の進度については研究代表者が所属先を途中で移動した影響があり、全体的に遅延気味であった。しかし本研究の主目的であるTRIP介入モデルに基づく介入と効果評価のためのデータ収集は、当初の計画どおり平成24年度内に終えており、ほぼ予定どおりに進んでいるといえる。ただ研究実施者のマンパワーの問題から、TRIP介入の研究対象病院を2病院に限定せざるを得ず、対照群の病院を確保できなかったことから、成果として提示できるエビデンスの低いことは否めず、今後の研究課題となる。 また本研究の発展的な目標である、研究成果に基づいた日本型トランスレーションリサーチモデルの作成と提案までには至っていないことが最終年度の課題として残されており、今年度以降の研究課題として取り組む必要性があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の予定は、まずは昨年度実施したTRIP介入研究に関するデータ分析をして効果測定を行い、その結果についてThe JBI (Joanna Briggs Institute) 2013 International Convention(オーストラリア、アデレード)で発表する予定である。一方で、被災高齢者の災害看護として、そのガイドライン作成に向けた取り組みとその成果をThe 20th IAGG World Congress of Gerontology and Geriatrics(韓国、ソウル)におけるシンポジウムで発表する予定である。 また、本研究の成果を踏まえて、日本の実情にあったトランスレーションリサーチモデルの提案を行っていきたいを考えている。そのため、まずはこれまで実施してきたTRIP介入の研究成果とプロセスをまとめ、その中で日本の病院でのEBP普及における現状と課題、そして課題克服のための方策を提案し、最終的に日本版トランスレーションリサーチもモデルを作成する。これらの内容については、本研究が最終年度出ることを鑑み、まずは研究成果報告書としてまとめ、その上で学術集会の交流集会や研究会などの機会をとおして積極的に公開をしていく予定である。 また、今後より一層エビデンスに基づく老年看護学実践の普及に貢献できる課題の探索と、それにかかわる研究者集団(クリティカルマス)の形成に向けて、シンポジウムや講演会を開催するなどの情報発信をするとともに共同研究者のリクルートを行って活動を広げ、次年度の科学研究費獲得に向けて準備をしていきたいと考えている。
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