【研究の目的と課題意識】団塊世代の高齢期への移行に伴い、高齢者の生活の質に関わる問題の深刻化が予測される、全国の大都市近郊の新興住宅地に適用可能な向老期世代を対象とした“地域への愛着”を育む健康増進プログラムを開発することを目的とした。長寿を生きる時代の人々の健康観「生活の質」(地域社会における安寧)を重視した公衆衛生活動として、個人の認識や行動の変化(個人変容)と地域の力量形成(社会変容)を同時にねらう健康増進の実践研究として取り組んできた。 【研究全体の概要(5年間)】①“地域への愛着”概念分析、②“地域への愛着”尺度開発、③構成概念を骨子にプログラム考案・試行、④プログラム評価、⑤プログラム改良・洗練の順に進めた。 【最終年度の研究活動】「“地域への愛着”と生活・健康に関する調査」の分析結果をもとに、“地域へ愛着”尺度を開発した。4つの構成概念と関連要因を骨子に『“地域への愛着”を育む健康増進プログラム』を考案・実施した。予防的な介入ニーズの高い小学校区を対象地域に選定し、50~60歳代の住民20名から研究参加を得た。プログラムの会場にて、開始直前と終了直後に会場にて調査紙調査、直後にグループインタビューを行った。介入後の参加者20名の日常生活における変化について、1ヶ月後、3ヵ月後、6ヵ月後まで質問紙調査(郵送法)を継続した。介入前後の変化を測定する尺度には、“地域への愛着”尺度、健康関連QOL尺度(SF-8)等を用い、近隣・地域に関する認識の変化に関する自由記載欄も設けた。また、プログラム終了後に、参加者20名が自主的なグループとして交流や活動を始めたことから、このことの影響も検討する必要があるため、地区担当保健師によるモニタリングも平行して行った。 総合的な評価より、プログラムによる一定の効果が確認された。効果をもたらしたプログラムの要素と改善のための課題を検討した。
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