研究課題/領域番号 |
22401001
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
吹田 浩 関西大学, 文学部, 教授 (80247890)
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研究分担者 |
沢田 正昭 国士舘大学, 21世紀アジア学部, 教授 (20000490)
西浦 忠輝 国士舘大学, イラク古代文化研究所, 教授 (20099922)
渡辺 智山 関西大学, 文学部, 教授 (30309207)
西形 達明 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (40121892)
伊藤 淳志 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (50159860)
安室 喜弘 関西大学, 工学部, 准教授 (50335478)
仲 政明 京都嵯峨芸術大学, 芸術学部, 准教授 (50411327)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | エジプト / 文化財 / サッカラ / マスタバ / 石造建造物 |
研究概要 |
平成22 年度より蓄積してきた情報をもとに、古代エジプトの石造建築物の修復技術を関西大学に移転した上で、現在のエジプトの遺跡(イドゥートのマスタバ墓)の劣化に対する提言をおこなうため、2012年8月~9月にかけてエジプト学、文化財科学、建築工学、文化財復元技術、メディア情報処理学の観点から調査を行った。 エジプト学の見地からは、このマスタバのレリーフと石造建築物の復元を行うために、本来のマスタバの形状と現在の壁画とマスタバ建築物の破損との因果関係を研究した。建築工学の観点からは、マスタバ建築構造物の問題点の整理を行い、その改善案の提案を行うために、マスタバ建築物の本来の形状の復元を建築学的に行った。保存科学の観点からは、マスタバ建築物の劣化原因に応じた保全案の提案を行うために、このマスタバ墓に設置した温湿度のダータ・ロガーからデータを回収し、このマスタバの環境を把握するため分析を行った。絵画修復の技術的観点からは、石灰岩のレリーフの劣化状態についての情報を収集した。情報システム学の観点からは、マスタバ内のレリーフの劣化状況を精密に記録するためデータ作成を継続して行った。 日本においても、エジプトで収集したデータの分析を進めるとともに、データベースの作成方法を検討した。劣化状態、その原因、保全策、本来のデザインなどこれまで蓄積したデータを組み込む方法を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地の遺跡(イドゥートのマスタバ墓)は、本来、観光客に開放されていなかったが、本研究の採択後、観光客に開放された。そのため、調査の際に観光客が訪問してくることがあり、しばしば調査が中断することがあった。調査に多少の遅れが生じているが、現地調査は概ね予定通りに進んでいる。データベースの作成は、多分野のデータを扱うことから、なお検討する項目が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、データベースの作成とマスタバの保全策の提言の策定を中心として研究する。データベースは、現在までにエジプト学、建築工学、地盤工学、保存科学、文化財修復技術の観点から収集してきた劣化状態、その原因、保全策、本来のデザインなどこれまで蓄積したデータを組み込んだものを検討している。その際、対象の遺跡であるイドゥートのマスタバ墓の中から、重要な壁面、劣化の状況の記録に有益な箇所を選び、情報リテラシーの観点から、保全策の策定などに利便性のある形式を模索する。 また、イドゥートのマスタバの劣化の原因を、気温・相対湿度のデータ、石灰岩・顔料の状態や特性、直射日光・雨・砂などの影響力なども諸要因を踏まえて、特定し、保全策を提案する。現地の遺跡管理当局など関連機関の意向などの情報も入手して検討し、エジプトの石造建築物の建築・地盤上の問題点などを整理した改善案を提示する。 加えて、日本において石灰岩製のレリーフなどの修復技術の向上を図るための実験も行う。
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