研究概要 |
EU域内における都市の観光地化と,増加傾向をたどるアジア出身の外国人居住者(以下,アジア系外国人)との関係を明らかにするために,ウィーンをはじめ,アムステルダムやコペンハーゲンなど中央ヨーロッパの都市を事例とした調査を行った。当該年度の研究分担者の作業結果は以下のとおりである。 研究代表者の加賀美雅弘は,オーストリアとチェコ,ドイツの大都市および地方中心都市において,アジア系外国人の集中地区に関する資料収集を行った。その結果,ウィーンやミュンヘンなどの大都市において,中国系や韓国系の商店が観光客向けおよび同じアジア系外国人向けという二様のビジネスを展開していることが明らかになった。 研究分担者の大島規江は,オーストリアおよびオランダにおいて,アジア系外国人の集中地区の土地利用と景観に関する調査を行った。これにより,とくにアムステルダムやウィーンなどの大都市において,アジア系外国人の商業施設が多くの観光客が訪れる場所になっていることが明らかになった。 研究分担者の山下清海は,オーストリア,デンマークおよびスウェーデンにおけるチャイナタウンの形成およびアジア系外国人集中地区の都市観光化に関する資料収集を行った。その結果,ウィーン,コペンハーゲン,ストックホルムなどの大都市・観光都市の中心部において料理店経営の傾向が顕著であることが明らかになった。 連携研究者の矢ケ崎典隆は,オーストリア,チェコ,ドイツの都市におけるアジア系外国人の集中地区で,外国人社会とホスト社会の関係について資料収集を行った。これにより,ヨーロッパ都市におけるアジア系外国人がヨーロッパの人々のアジアへのまなざしを利用したビジネスを展開していることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度として,特に研究分担者の役割分担を明確にし,それぞれがしっかりと成果を出す。研究代表者の加賀美と分担者の大島がそれぞれ,中央ヨーロッパの都市の事例としてウィーン,アムステルダムの2都市に重点を置いた調査を実施する。その際,アジア系外国人として特に中国出身者に注目し,研究分担者の山下がその社会・経済的特性の解明を行う。さらに,研究分担者の矢ケ崎がアジア系外国人集団が集積するアメリカ合衆国の事例との比較検討を進める。最終的には,それらをまとめてEU都市におけるアジア系外国人の活動に関する総合的な考察へと発展させる。
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