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2011 年度 実績報告書

カンボジア・アンコール遺跡における石材の風化量の定量化とその寿命に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22401005
研究機関日本大学

研究代表者

藁谷 哲也  日本大学, 文理学部, 教授 (30201271)

キーワード地形学 / 世界遺産 / 岩石風化 / 建築石材 / アンコール遺跡 / 劣化 / 気象観測ステーション
研究概要

アンコール遺跡では,古いもので建築後1000年以上が経過し,自然劣化が顕著である。そこで1)アンコール・ワット回廊部の砂岩柱を対象に,風化量と原位置物性値を測定した。また2)柱の風化には,気象環境が強く係わっていると推測されるため,遺跡内に気象ステーション(2010年12月22日)やデータロガー(10箇所,2011年8月22日)を設置し,気象観測を継続した。一方,3)供試体7種(砂岩,ラテライトほか),14個を遺跡内に暴露(2011年8月24日)させるとともに,ディスク状供試体(砂岩・ラテライト)を地中に埋設(2012年3月18日)して,風化量・物性値の変化を定期的に測定した。平行して,4)室内では現地の温・湿度変化をプログラムした環境試験機を用い,7岩種を用いた風化加速実験を開始(2011年12月26日)した。さらに,5)植生による遺跡の破壊が顕著なタ・プロム寺院とベン・メリア寺院を対象に,樹木のマッピングと樹木が遺跡の破壊に与える影響を分析した。これらのうち,3)4)は経過時間が少なく,顕著な結果は得られていない。一方,1)について,第一回廊内柱の日陰面は,日向面に比べて強度が低く,含水比が高いことがわかった。これに対して日向面は,乾燥して強度も高いが,最大約67mmの風化凹みが認められた。このような差異は,柱の微気象環境によると考えられ,日陰面では強度低下による風化の進行が懸念される。また2)の気象データ(2011年1~12月)の解析から,現地の気温は36.1℃~15.3℃と年較差が大きく,年間降水日数139日で,降水量2,065mmであることがわかった。さらに5)では,タ・プロムで140本,ベン・メリアで約635本の樹木を確認し,とくにタ・プロムでは平均樹高30mに達するTetrameles nudifloraが優勢し,遺跡の破壊に影響していることが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

アンコール・ワットにおける気象ステーションの設置許可までに,時間を要したが,設置後は,屋外(気象ステーション圃場内)における風化実験や回廊部の風化量・物性値測定は順調に進んでいると考えられる。また,連携研究者と分担的に研究を進めていることも,研究がおおむね順調に進展している主な理由である。

今後の研究の推進方策

研究データが少しずつ蓄積されてきた。そこでいくつかの課題を設定して,中間的な報告を取りまとめたいと考えている。なお,現時点では,屋外および屋内における岩石供試体の風化結果が十分得られていない。とくに屋外における風化実験では,岩石供試体の風化が遅く進んでいるためと考えられる。しかし,本実験の性格上,風化速度を人為的に加速させることは困難である。一方,室内の風化実験では,途中の物性計測を簡略化して環境変化の反復数を増やし,十分な結果が得られるようにする予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] The Correlation between the Water Content and Brightness of Rock Surfaces2011

    • 著者名/発表者名
      Waragai, T, M.Hara
    • 雑誌名

      Transactions, Japanese Geomorphological Union

      巻: 32 ページ: 317-326

    • 査読あり
  • [学会発表] アンコール・ワットの第1回廊を構成する砂岩柱の強度と風化条件2012

    • 著者名/発表者名
      比企祐介・松田辰・羽田麻美・藁谷哲也
    • 学会等名
      日本地理学会
    • 発表場所
      首都大学東京(東京)
    • 年月日
      2012-03-28
  • [学会発表] アンコール・ワット寺院の気象観測ステーションから得られた気象要素の変化と石材の劣化に与える影響2011

    • 著者名/発表者名
      藁谷哲也・森島済・羽田麻美
    • 学会等名
      日本大学地理学会
    • 発表場所
      日本大学文理学部(東京)
    • 年月日
      2011-11-20
  • [学会発表] アンコール遺跡群における植物根茎の破壊作用の評価-タ・プローム寺院における樹木分布について-2011

    • 著者名/発表者名
      松田辰・比企祐介・羽田麻美・藁谷哲也
    • 学会等名
      日本大学地理学会
    • 発表場所
      日本大学文理学部(東京)
    • 年月日
      2011-11-20
  • [学会発表] アンコール・ワット第一回廊を構成する砂岩柱の強度分布2011

    • 著者名/発表者名
      比企祐介・松田辰・羽田麻美・藁谷哲也
    • 学会等名
      日本大学地理学会
    • 発表場所
      日本大学文理学部(東京)
    • 年月日
      2011-11-20
  • [備考]

    • URL

      http://www.k4.dion.ne.jp/~chsgoa/

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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