研究課題
本調査では捕鯨に関して日豪の異なる価値観の歴史的背景、持続性とメディアの影響、地域住民レベルでの意識の統一性が明らかになった。歴史的には捕鯨の国際関係への影響が明らかであった。日本では江戸後期からの組織的捕鯨が明治後期に産業化し、世界的な捕鯨終焉期に「西洋式」漁法の導入のもと近代化、漁場も近海から遠洋へと拡大する。戦後は「敗戦するも捕鯨では世界一」という意識が、またその主な目的が食用であったことが「文化の特異性」、「国家の誇り」という価値観を作り上げた。一方、豪州の捕鯨は、英国との政治、経済的繋がりの維持から、やがては独立した国家意識を得る過程と平行する。初期の合同南極探検などにもその繋がりは見られるが、捕鯨は60年代から鯨油、関連製品の需要の減少とともに衰退、1972年のEU鯨類製品、UKのペット用鯨肉輸入禁止とともに決定的な終焉を迎える。これらは、豪国内で国家意識が高揚し環境保全への意識が高まる時期と重なる。一方、捕鯨の国際管理ではIWC(1946)がその条約に鯨類の保全と産業の持続的推進を謳うが、産業を前提とする保全理念は産業の衰退とともに効力を失っていく。持続性理念の欠如は、地域を顧みない一部の環境団体等の偏向した価値観の普遍・正当化、更にメディアによる利用につながっている。が、多様な地域環境と長年対峙する人々、その自己認識、誇り、文化、倫理観は真の持続性への統一性ある基盤となる。東北大震災以降、持続性を普遍的価値とすることは世界的な緊急課題である。それは「人間世」の倫理、すなわち、文明という創造物に起因する環境変化への責任という認識であり、それを地域の視点から考察、実行していくことが、持続性を支える多様性である。最終年度は研究執筆を中心とし、本研究を基盤として地域に育まれる倫理の継承手段としての観光、特に復興手段としての観光のあり方について研究を始めている。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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