研究課題/領域番号 |
22401011
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池田 光穂 大阪大学, コミュニケーションデザイン・センター, 教授 (40211718)
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研究分担者 |
太田 好信 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (60203808)
小林 致広 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (10145823)
狐崎 知己 専修大学, 経済学部, 教授 (70234747)
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キーワード | 先住民運動 / 先住民 / 政治的アイデンティティ / メキシコ / グアテマラ / 文化 / 政治 / 先住民政策 |
研究概要 |
メキシコおよびグアテマラの先住民について、彼/彼女らを本質主義的な文化的アイデンティティの担い手とみるのではなく、周縁化による排除から自らの権利行使としての国政への参加や存在の文化的顕示の実践、すなわち先住民の政治的アイデンティティの主体(およびその構築)という観点から捉え直すことが本研究の目的である。本年度は、池田は、グアテマラのサン・マルコス県における調査地の地元協議会(COCODE)と村長派の対立という共同体内の紛争事例の分析をおこない、地方分権化情況における先住民の政治的アイデンティティの覚醒過程について資料収集をおこなった。太田は、グアテマラ・チマルテナンゴ県における内戦時における紛争の記憶や語りについて調べ、内戦に巻き込まれながらも、生き延びてきたマヤ系先住民の人びとが、現在の自分たちの生活と内戦の経験をどう結び付けて理解しているか、という疑問をインタビュー調査により解明した。小林は、メキシコ市のNPO、ミチョアカン州のプレペチャ先住民共同体、プエプラ州のナウァ先住民、モレロス州の祭礼などについて調査をおこない、先住民政治の模索とその失敗の要因について分析を加えた。狐崎は、メキシコ政府社会開発省の役人・官僚ならびにワステカ先住民の代表へのインタビューに成功し、社会開発プログラムの理論的基盤、実施状況と評価手法、評価についてヒアリングを行った。またソノラ州のヤキ先住民共同体における農地・農業問題について現地調査をおこなった。太田(編者)ならびに小林(執筆者)は、この調査を研究における成果報告(一部)として『政治的アイデンティティの人類学』(昭和堂、2012年)を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究分担者である太田好信がはじめて提唱した「政治的アイデンティティ」として先住民の現在をみる視座を、メキシコとグアテマラの先住民の現地調査という共同研究を通して明らかにしようとする本研究のテーマは斬新である。現在、各人が試行錯誤しながら着実にインタビュー資料を蓄積しており、これらが将来比較検討されることで、他の地域研究者にも大いなる研究上の展開をもたらすことが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、本共同研究調査の後半の最初のフェーズになり、最終年度の1年前のものとなるために、現地調調査の前後に、何らかの理論的視座の共有や、これまで蓄積されてきた現地資料の交換や検討が必要となる。このことに関する、共有や議論の積み重ねがこれまで以上に円滑にすすんでいる訳ではない。マンネリズムよりも、むしろそれぞれの本務の大学ならびに大学院における教育や事務管理という研究外の負担が近年ますます増加しつつあるのもその一因であろう。関連する研究に従事している若手研究者なども招聘した共同研究会等を開催して、本研究課題の検討の裾野を拡げてゆくことで、(次世代育成も兼ねて)この問題を克服すべきだと考えている。
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