本研究は、マレー半島におけるシンガポール、マレーシア、タイの陸の国境管理を事例として、発展途上国の国境管理に関する政策と政策の社会経済的影響について、歴史的背景を踏まえて考察することを目的としている。具体的には、対象3か国の国境管理の論理、国境を越える道路網の開発・運用、人の移動ルートおよび「移動圏」の形成の実態とその背景要因の分析を行う。 本年度は研究初年度として、まず本研究に関連する文献の収集を、インターネットおよび国内図書館の利用により行った。東南アジアの国境をめぐる実証研究、国境研究の理論的および比較アプローチによる研究について、主要な文献の収集をほぼ完了し、現在その整理を進めている。また、直接の分析対象となる現地の政策文書、統計資料、現地新聞記事のなかで、インターネットで入手可能な資料の収集、分析も継続中である。 さらに、現地調査も実施した。本年度はシンガポール-マレーシア国境およびマレー半島西側のマレーシア-タイ国境(マレーシア側)に焦点を絞り、シンガポール、ジョホール・バル、アロー・スターの3都市を拠点として調査を行った。主な調査内容は、政府関連資料など、現地でなければ入手できない資料の収集、国境ポイントにおけるフィールドワーク、インタビュー、長距離バス・タクシー企業に関する資料収集、フィールドワークとインタビューである。現在調査結果の整理、分析中であり、この結果を基に、次年度以降も現地調査を継続する予定である。
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