本研究は、発展途上国の国境管理に関する政策と政策の社会経済的影響について、マレー半島におけるマレーシア‐シンガポール、マレーシア‐タイの陸の国境管理を事例として考察・分析することを目的としている。 本年度は研究最終年度として、上記の目的を踏まえ、特にマレーシア、シンガポールの2か国の国境管理の論理、国境を越える道路網の開発・運用、人の移動ルートおよび「移動圏」の形成の実態に関して、平成24年夏と平成25年冬の2回、追加調査を行った。まず現地資料としては、マレーシアの首都クアラ・ルンプルにおいて、道路網に関する重要な政府関連資料を、シンガポールにおいて、政府関連資料および現地新聞データベースによる貴重な記事を入手することができた。これに加えて、シンガポール‐マレーシア国境の状況について、マレーシア側の越境を促す開発として今後大きな可能性を持つジョホール・バルのイスカンダル計画の、現地における開発進展状況と政策に関するデータを収集した。この追加調査により、特にナショナルおよびローカルなアクターの国境管理への関与についての考察を補強する資料、データを揃えることができた。その上で、これらの資料、データに関し、順調に分析を遂行した。 また、既存研究に関する書籍、論文についても、追加収集の上内容を読み込み、分析の一助とした。 本年度においては、研究代表者が1回、研究分担者が3回、それぞれ学会、国際ワークショップにおいて研究成果の一部を報告した。最終的な研究成果をまとめていく上で、考察をさらに進めるよい機会となった。
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