アジアのインド系及び華人系移民による民族宗教(ヒンドゥー教と道教)の受容と変容、意義、ホスト社会との関係についての総合的調査研究プロジェクトである。平成26年度には、主に東南アジアのディアスポラでの実態について現地調査を行い、儀礼の詳細と寺院活動について調べた。 シンガポール、マレーシア(ペナン州およびジョホール州)、タイ(バンコク都)、インドネシア・ジャカルタ首都圏を中心に現地調査に赴き、非サンスクリット系の神格や祭祀へのブラーフマン司祭の関与と神観念の変容に焦点を絞り検証した。取材に当たっては、信者集団等についても効率的に知り得るよう、特定祭事に重なるように日程調整し集中調査を行った。ペナン島とジョホールバル市では、ヒンドゥー寺院に加え華人系道教寺廟も訪れ、運営評議会のトップに面接取材を行い、ディアスポラにおける民族宗教の現状につき比較宗教的観点から調査に従事した。欧米に展開するスリランカ・タミル難民の宗教正確を知るべく、内戦終結後のスリランカに赴き、首都コロンボにてタミル系のヒンドゥー寺院を10か寺近く訪れてスリランカのヒンドゥー教について新知見を得た。 夏期休暇中にイスラム圏に赴き、オマーンでグジャラート系のヒンドゥー寺院2か寺を集中調査し、インド系移民の宗教生活につき知見を得た。インドネシア・ジャカルタのスィンドゥ系シヴァ寺院では、タミル系新移民の宗教実践につき参与観察し得た。またインド系宗教の一つとして、バンコクにあるスィク教グルドワーラを訪問し、文化活動や教育活動についても知り得た。 日本におけるインド人集中地区として近年出現した東京都江戸川区葛西周辺を取材するとともに、タミル系インド人によるポンガル祭に参加し、東京のインド系移民の実態と宗教生活について新知見を得た。 上記の集中的な調査に基づき、日本宗教学会で成果発表を行うとともに、論文数編に纏めて公開した。
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