2010年8月~9月にかけて約3週間半中米のマヤ地域に滞在し、現地フィールドワーク、及び資料収集を行った。滞在した地域はメキシコ共和国、ユカタン半島及びチアパス地方、及びグアテマラ共和国キチェー地方である。今回の調査の目的は二つあった。一つはこれらの各地域においてマヤのカレンダー、マヤ神聖暦及び太陽暦がどのような状態で保存されているのかを調査すること、また現代のマヤ・シャーマンがこれらのカレンダーをいかにして使用しているのかを確かめることであった。調査の結果、これらのマヤのカレンダーはユカタン半島、及びチアパス地方ではほとんど保存されていないこと、またこれらを使用するマヤ・シャーマンもまた稀であることが判明した。唯一の例外はグアテマラのキチェー地方で、ここでは、筆者のこれまでの調査研究でも判明しているが、マヤ・カレンダーは現在でも完全な状態で維持されていて、多くのマヤ・シャーマンによって儀式等で使われている。したがって今後の調査は主にキチェー地域での伝統をより深く掘り下げることになるであろう。調査のもう一つの目的は、現在に伝わるマヤ・カンレンダーの伝統及び根本理念が、過去のマヤ文明の時間思想といかにして接続しているのかを確かめることであった。そのために各地(とりわけユカタン半島)のマヤの遺跡を巡り、そこに残されている古代人の天文知識、時間概念、空間認識、宇宙観、神話体系等を理解しようと試みた。この後者に関してはフィールドワークだけでは不十分であるので、それを補完するため、2011年1月末に約1週間アメリカ合衆国ロスアンジェルス市にあるUCLAの図書館において集中的な文献調査を実施した。結論として、テーマに関して多くの具体的データが得られたが、2010年度は調査の初年度であり、2011年度により本格的なフィールドワーク、文献調査を実施して、その最終結果を分析・総合したいと考えている。
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