研究課題/領域番号 |
22401019
|
研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
関 出 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (60154639)
|
研究分担者 |
佐藤 道信 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (30154074)
斉藤 典彦 東京芸術大学, 美術学部, 教授 (60272647)
古田 亮 東京芸術大学, 大学美術館, 准教授 (20259998)
荒井 経 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 准教授 (60361739)
小島 徳朗 京都市立芸術大学, 美術学部, 講師 (70548263)
|
キーワード | 美術史 / 中国画 / 日本画 |
研究概要 |
平成23年3月11日以来の震災の影響で、延期となっていた北京調査渡航(中央美術学院、中国美術館など)は、平成23年度繰越(翌債)の承認を受け、5月に4名によって実施した。中央美術学院の中国画院では、院生の各アトリエにて制作実習を視察するとともに、学院構内の岩絵具製造工房を見学し、意見交換および参考となる資料を収集した。 9月には、敦煌莫高窟、楡林窟の壁画調査を5名+学外協力者2名にて行い、敦煌研究院で開催された中日岩彩画交流展を見学し、また国際学術検討会"敦煌意象"の学術発表と討論に参加することによって成果をあげた。この国際シンポジウムでは、敦煌壁画、保存修復、岩彩画をテーマとして、敦煌研究院美術研究所の所員、中国各地の画家・研究者、日本側からは京都市芸術大学教員および本科研関係の東京芸術大学教員・学外協力者らが参加し、率直な意見を交換する有意義な機会となった。 10月には、東京芸術大学アジア総合センター・プロジェクトの関連企画として、台湾に7名が渡航した。国立台湾芸術大学、国立台湾師範大学、東海大学を訪問し、大学の各アトリエで実習状況を視察するとともに、教員との意見交換など研究交流を行った。 11月には、第三回公開研究会を東京芸術大学において開催し、北京・敦煌・台湾の各渡航調査の成果を報告するとともに、理論系専門領域からの研究発表があり、組織外の研究者や学生ら21名が参加して活発な意見交換が行われた。 平成24年2月には、京都国立博物館にて開催中の特別展「中国近代絵画と日本」の鑑賞に8名が参加した。本科研の研究課題と合致した企画内容であり、研究上の具体的な示唆を展示作品から得る機会となった。 3月には、第四回公開研究会を東京芸術大学において開催した。招待研究者2名、研究組織から3名が発表を行った。参加者は約50名で、ディスカッションを含め、貴重な情報交換の場となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年、23年の中国渡航によって、主要な美術大学を歴訪し「岩彩画」を中心に中国画の情報収集と分析を進め、現状がいかにあるのかの認識を深めた。日本への留学経験者で、旧知の教員や画家の存在が、日中間相互の理解や意思疎通に大きく役立ち、訪問調査の成果を高めた。これまでに、研究者との交流も広がり、日本画と中国画の関係構築の基礎を築く意見交換を行った。両国の絵画を、東洋絵画の中で相対的に位置付ける研究の達成度は未だ不十分ではあるが手がかりを得て、今後進展させる必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
公開シンポジウムを開催して、平成22年、23年に得た調査成果を広く公開し、研究チーム以外の専門家からも意見を聴取する。これらを総括して、中国に再渡航し、中国側研究者との意見交換を行い、中国画と日本画の将来展望や今後期待される交流事業への提言を行う。 「岩彩画」を啓発した「戦後日本画」の研究を強化し、東洋絵画の近代史の中でどのように位置づけられるものであるかについて、国内の先行研究に本海外調査による研究成果をすり合わせていくことによって一定の結論を導き出す。また、今後に希求される「岩彩画」ならびに「中国画」と「日本画」との関係構築に向けた理念と方法を提言する。 研究報告書の構成は、(1)中国渡航調査の成果報告書、(2)公開シンポジウムの記録、(3)本研究全体を通しての論考集、からなる報告書を作成する。(論考集は、日本画家、日本東洋美術史研究者、中国側の画家ならびに研究者各々の立場からの見解を出し合うものとして、結論の多様性を担保する。)
|