研究課題/領域番号 |
22401022
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研究機関 | (財)大阪市博物館協会 |
研究代表者 |
伊藤 郁太郎 (財)大阪市博物館協会, 大阪市立東洋陶磁美術館, 名誉館長 (40373518)
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キーワード | 宋代青磁 / 官窯青磁 / 張公巷窯 / 北宋官窯 |
研究概要 |
宋代官窯青磁の研究の中で、議論の的の一つが、河南省汝州市所在の張公巷窯が北宋官窯に比定し得るか否かの問題であり、これまでの発掘調査の範囲だけでは結論が出せないため、追加発掘計画の実現が俟たれていた。発掘調査の当事者である河南省文物考古研究所はすでに国家予算も獲得し、その期限が切れる平成23年度末までに何らかの進展を見せるはずであったが、昨年末現在、未だに実施の報告に接していない。かかる現況により昨年度の研究計画は若干の変更を加えざるを得ず、下記計画実施した。 1)汝州張公巷窯については、北宋官窯同定論の発端となった上海博物館蔵の資料についての再検討を行った。しかし同館に於いても追加発掘による新資料の発見がない限り、推論の段階を脱することが出来ない、という現状認識の確認に止まらざるを得なかった。 2)浙省杭州市所在の南宋官窯址については、これまで大規模、綿密な発掘調査が行われたにも関わらず、未だに正式発掘報告書が刊行されておらず、詳細な状況については発掘調査の当事者である杭州考古研究所に直接、確認していかざるを得ない。昨年度は修内司官窯と郊壇下官窯出土品の相違点について詳細な資料提供を得て、一定の知見を深めることが出来た。 3)宋代官窯青磁の研究には出土資料のみならず、伝世品の研究が不可欠である。これら資料を多く所蔵する台北故宮博物院の特別の許可を得て、20数点の作品を熟覧できた。宋代のみならず、元明代の倣製品との比較ができ、官窯と倣官窯の相違という本研究課題における重要な問題解決に有益な成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
宋代官窯青磁の研究は地域が華北・華中に分かれ、多岐にわたるが、本研究の目的の一つに河南省汝州張公巷窯が文献記載の「北宋官窯」に比定し得るかの検証があった。発掘済みの資料だけでは結論が出せないため、発掘範囲の拡大が計画され、国家予算も獲得済みであったが、住居立退問題が癒着状況から脱し切れず、昨年末までには進展を見ることが出来なかったため、達成率は50%。その他の地域の調査は70%の達成率。
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今後の研究の推進方策 |
1)宋金代河南省青磁窯址及び河北省定窯址出土資料の比較検討。 2)浙江省南宋越窯、南宋官窯(修内司窯、郊壇下窯)、龍泉窯出土資料の比較検討。 3)宋金代及び元明代の窯址出土資料と伝世品の比較検討。 上記を通じて、本研究の主要目的である宋代官窯青磁の全体像の解明に努める。
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