平成25年度は、宋代官窯青磁について側面的状況を明らかにしつつ、本題に迫るという方法で研究を進めた。本研究の中心テーマである北宋官窯に擬せられる汝州張公巷窯の2012 年度の発掘成果が余り上がらなかった為である。その為、次の目標に切り替えた。1) 中国では始めての試みである中国出土の高麗青磁についての国際学術会議(杭州市)に参加、併催の高麗青磁展を参観したことは本研究にとっても有意義であった。日中韓の研究者の研究発表のうち主力を占めたのが、出土地別の資料の紹介であり、杭州、寧波を始め、北京、内蒙古など広い流通範囲が分かり、従前にもまして高麗青磁の受容状態が明らかになった。特に展覧会に出品された北京出土の青磁陽刻龍文瓜形梅瓶は精緻なもので、徐兢の『高麗図経』の記文を彷彿させ、制作年代の考察に一石を投じた。また汝窯写しの青磁陽刻蓮弁文香炉基台は、中国製、其の模倣品、中国への里帰りという変転の跡を窺わせた。 2) 越窯とけい窯についての学術研討会(慈渓市)に参加、関連展覧会を参観、改めて越窯が高麗青磁に与えた影響の大きさを感じさせた。 3) 汝州張公巷窯の2013 年度の発掘調査の成果が思わしくなかった為、さらなる追加発掘調査の促進を発掘当事者に強く要請した。一方、汝窯については、2008 年に詳細な発掘報告書が刊行されたが、其の後も発掘調査は続行され、最近、重要な新資料が発見された由。発表を俟ちたい。 4)台北故宮博物院における汝窯、南宋官窯の館蔵品調査は本年も続行し、両者の相違点が次第に明らかになりつつある。 5) 福岡県から出土する高麗青磁は、我が国でも代表的なもので、我が国への流入時期の検討は、制作年代の検討とも連動し、大きな意義を持つため調査した。
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