研究課題/領域番号 |
22401027
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
秋谷 裕幸 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (10263964)
|
キーワード | 中国語 / 方言 / びん語 / フィールドワーク / びん北区方言群 / 浦城県 / 呉語 |
研究概要 |
平成23年度の中心的課題は「水北街方言および観前方言の調査・データ入力」であった。昨年度の研究が順調に進行し、観前方言の調査にも着手できていたため、今年度の中心的課題はおおむね達成することができた。昨年度調査した山下、臨江方言、そして観前、仙陽方言については、各地点あと半日程度のチェックを行えば当初の計画が達成できる。水北街方言についてはもう10日前後の調査を行う必要がある。 臨江方言の音韻特徴については11月中国福州市で開催された全国漢語方言学会第16届年会で報告した。他のびん北区方言同様、この方言も陽平が2種類の異なる調値に分裂している。しかしその分裂は他のびん北区方言とかなり異なる様相を呈しており、いわゆる陽平甲に変化するのは「頭、床、糖」など音節頭子音が有気音の語と「横、螺、鱗」など頭子音が摩擦音の語だけである。この分裂状況が、実は〓将区方言群における陽平分裂とほぼ同様であることは、びん語史にとってきわめて重要な意味あいを持っている。臨江方言と〓将区方言群間の言語接触はほとんど考えられない。両者が独自に同じ調類変化を起こしたと考えられ、〓将区方言群とはびん北語方言群の一変種である可能性が濃厚となる。この問題については中国の龍安隆氏がすでに論じているが、氏が〓将区方言と比較したのは普通のびん北区方言であり、〓将区方言群の陽平分裂現象との間にそれほど顕著な類似は認められない。臨江方言のデータにより、龍安隆氏の予想を実証できると私は考えている。この点については全国漢語方言学会第16届年会の報告でも言及した。当初の研究計画では予想していなかった発見であるが、きわめて重要なので、本研究課題にかかる調査報告でも詳しく論じたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書には、本年度の中心課題として「水北街方言および観前方言の調査・データ入力」と記した。この目標はほぼ達成された。現在までに、山下、臨江、観前方言および平成24年度以降実施予定だった仙陽方言の調査がほぼ完成しており、水北街方言もほぼ同じような段階にある。このように研究は計画をかなり上回る速度で進捗している。そこで(1)と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
11.に記したように研究は非常に順調に進んでいる。研究報告書の臨江方言部分についてはすでに調査報告書執筆に取りかかっている。大きなトラブルさえなければ、来年度内には調査はすべて完成させることができる。ぜひそのように研究を進め、最終年度の平成25年度には調査報告書執筆に専念し、遅くとも平成26年度内には正式出版までもっていきたい。
|