本研究における2012年度の研究目的は、2010,11年度に行った発掘調査、研究の成果をまとめ、1998年から続けてきた同遺跡についての調査・研究の中間的な総括をし、シンポジウム『渤海を掘るX』を開催して公表することであった。そのために、1992年から共同研究をともに行なってきたロシア科学アカデミー極東支部諸民族歴史学・考古学・民族学研究所の中世考古学研究班の研究員4名を招請するとともに、国内の考古学、文献史学の渤海研究者を招いて、2013年3月9日、10日に青山学院大学においてシンポジウムを開催した。「沿海州渤海古城 クラスキノ古城の機能と性格」と題して、研究代表者と日・ロ双方の連携研究者及び研究協力者がそれぞれのテーマで研究発表を行い、研究者間でクラスキノ土城に関する認識を共有し、理解を深めることが出来た。また、その成果を『論集 沿海州渤海古城 クラスキノ古城の機能と性格』として出版し、内外の研究者に公表することが出来た。研究代表者である清水信行は、青山学院大学文学部助手岩井浩人氏、同大学院博士後期課程田端潤氏の協力を得て、このシンポジウムの研究発表のための資料収集及び作成のために、ウラジオストックの上記研究所に行き、同研究所付属博物館、アルセイニェフ博物館、国立極東大学博物館所蔵の渤海遺跡出土の瓦を中心とする遺物を調査した。その成果を前述のシンポジウムと論集において、発表することが出来た。また、同研究所の若手研究者、エレーナ・アスタシェンコワ氏が日露青年交流センターが実施しているフェローシップに応募し、採用された際に、青山学院大学が受け入れ機関となり、研究代表者清水が指導教員として、ロシアの若手渤海研究者養成に役立つことが出来た(受け入れ期間は2012年10月2日~同年12月29日)。
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