12月に河南省、山西省、北京市で調査をおこない、霊井遺跡に関しては、細石核、細石刃、細石核打面再生剥片など、細石刃関連遺物の集計、観察、実測をほぼ完了した。その結果、細石核63点、細石刃132点、細石核打面再生剥片18点などが確認できた。さらに、細石核は、舟形のもの2点、楔形のもの1点を除くと、いずれも角錐状のものに分類できるものであった。これらの作業から、霊井の細石刃技術は、打面の調整や再生をおこないながら細石刃を剥離し、多様な形状の角錐状細石核を残す西南日本の矢出川技法と類似することがわかった。華北地域の類例としては、河北省油房遺跡、山西省羊角山、陝西省龍王辿の石器群があげられる。また、霊井遺跡から採集された17点の炭化物の年代測定を実施したところ、ほぼ11500-11900c14年B.P.に集中した。このため、若干の年代差をもちながらも、約1.4万cal年B.P.のものの可能性が高いと判断している。この年代は、上記の類似石器群と比較すると極めて新しいものなので、その解釈が今後の課題となる。 1月には、韓国の研究機関・博物館をめぐり、韓国の細石器の観察をおこない、霊井石器群と比較した。韓国のものは両面調整体を細石刃剥離の前に製作する点が特徴であり、霊井のものとは違いが大きいことを再確認したが、長興里遺跡の石器群など、従来知られていなかった角錐状細石核をもつ石器群も見出した。 研究成果の報告は、9月にサハリンでの国際シンポジウム"The Initial Human Habitation of the Continental and the Insular Parts of the Northeast Asia"、2月には北アジア調査研究報告会でおこない、内外の研究者から注目された。 このほか、3月に南京を中心に、江蘇省将軍崖出土品ほかの予備調査をおこなった。
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