研究課題/領域番号 |
22401036
|
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
加藤 真二 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 展示企画室長 (20261125)
|
キーワード | 細石刃 / 華北 / 霊井 / 国際研究者交流 / 中国:韓国 / AMS |
研究概要 |
山東、河南、河北(4月17日~30日)、江蘇、河南(12月18日~26日)、寧夏、甘粛、北京(2月26日~3月4日)で、それぞれ霊井遺跡出土品ならびに関連資料の調査を行った。また、1月5日~7日に北京の中国社会科学院考古研究所で今後の研究について調整をおこなった。 霊井遺跡出土の資料については、必要な資料の観察、計測、実測をおおむね終了することができ、実測図についてトレースを開始した。この結果、霊井遺跡の細石刃石器群については、ほぼその全容を把握できた。また、新たに出土した細石刃石器群と共伴したとする土器片について東京大学でAMS法による年代測定をおこなった。年代測定ができた試料2点(ともに土器胎土)の未較正年代は、9330±60、9530±70年BPであり、平成22年度に測定した細石刃石器群にともなう炭化物の年代測定値(11500-11900年BP 未較正)よりも若干新しい。把握された霊井細石刃石器群に、年代的に新しい土器にともなう細石刃石器群が混在していないか、再検討が必要となった。 関連資料の調査では、河北、山東、江蘇、甘粛において、霊井石器群とほぼ同時期の約1.2万~1.0万年前(未較正)と年代測定された小型舟底形細石核をもつ石器群を確認することができた。この石器群と類似する石器群は、河南省舞陽大闇でも検出されており、華北全域にみられることが判明した。今後、その消長ならびに霊井石器群との関係について、分析を進める。 以上の研究成果については、アジア旧石器協会東京大会(国立科学博物館、11月27日)、北アジア調査研究報告会(東京大学、2月12日)で発表した。このほか、7月25日~30日に中国から3名、韓国から1名の研究者を招聘し、北海道の北方系細石刃石器群の調査を行うとともに、それをもとに今後の研究についての調整をおこなった。また、本年度には、関連論文3本を執筆、投稿しており、平成24年度中に雑誌等に掲載される予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画よりも早く実測、計測等を終了させるとともに、新たに出土した土器の年代測定も実施し、重要な年代測定値を得ることができた。また、関連文献、細石刃遺跡の収集とリストアップも順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年、25年度中に、補足調査と関連資料の調査をおこなうとともに、平成24年度中には、霊井の細石刃石器群の報告書の日本語版原稿の完成を目指す。関連資料については、山東省、河北省資料の追加調査、黒龍江省・吉林省・遼寧省資料、広東省西樵山資料(香港中文大学ほか所蔵)を念頭に置きたい。また、調査成果については、アジア旧石器協会クラスノヤルスク大会、同中国大会等の国際学会、日本旧石器学会奈良大会などで順次報告していく。平成25年度には、補足調査と関連資料の調査を踏まえて、原稿をブラッシュアップし、報告書を刊行する。 また、平成25年度上半期まで、関連文献、細石刃遺跡情報の収集とリストアップを行い、最終的には報告書に資料として掲載する。
|