研究課題/領域番号 |
22401036
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
加藤 真二 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, その他部局等, その他 (20261125)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 考古学 / 先史学 / 旧石器 / 細石刃 / 中国 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
研究概要 |
査読論文の加藤真二・李占揚「河南省許昌市霊井遺跡の細石刃技術-華北地域における角錐状細石核石器群-」(『旧石器研究』8、31~41頁)を発表。この論文の概要を平成25年2月28日に香港中文大学において報告。 7月4~15日にアジア旧石器協会(APA)ロシア大会シンポジウム(於:クラスノヤルスク国立教育大学ほか)で“The Diffusion of Northern Microblade Industries in East Asia.”と題し、本研究成果の一端を報告。 11月24・25日に国際シンポジウム「東北アジアにおける古環境変動と旧石器編年」(於:同志社大学)で「泥河湾盆地における小型剥片石器群と細石刃石器群」を発表、泥河湾盆地の細石刃石器群に対する調査成果について報告。 平成25年2月9・10日に第14回北アジア調査研究報告会(於:石川県立歴史博物館)で「華北西部の細石刃石器群」を報告、華北西部の細石刃石器群の様相を示した。 海外調査は、平成25年1月20~27日にパリに所在するフランス古生物・人類学研究所(IPH)で、連携研究者の高倉純、長沼正樹、竹花和晴とともに1923年に発掘された寧夏回族自治区水洞溝遺跡、内蒙古シャラオソゴル遺跡出土の資料を詳細観察、写真撮影した。水洞溝資料の中に小口面より狭長な石刃を剥離した石核を見出し、楔形細石核を用いる細石刃技術の萌芽が後期旧石器初頭の石器群(EUP)に見られる可能性を確認した。 平成25年2月20~3月2日に河北省文物研究所、河南省文物考古研究所、香港中文大学で河北省于家溝遺跡、霊井遺跡、広東省西樵山遺跡の石器群を連携研究者の長沼正樹、國木田大、芝康次郎と詳細観察、写真撮影、実測などを行った。霊井石器群については石材鑑定を実施、燧石が大部分を占め、これに若干の珪質岩、珪質灰岩、石英のものがともなうことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
霊井遺跡の石器群の観察、写真撮影、計測、実測、石材鑑定などの整理作業については、予定通り、平成24年度をもって、ほぼ完了することができた。また、関連遺跡の石器群に関する資料収集も順調に進み、平成24年度までの文献資料もほぼすべて集成している。また、詳細観察を済ましていないのは、東北三省および天津の新出資料のみとなっているが、平成25年度に実施したい。 これまでの調査研究により、霊井石器群の技術的な特徴、中国細石刃文化での位置づけ、中国細石刃石器群の変遷と周辺地域の石器群との関連などについては、大きく研究が進めることができ、その中間的な成果も査読論文、国際会議・シンポジウムの場での報告などで公開、学界で注目されている。 さらに、平成25年度には、年度初めより、報告書の執筆・編集を開始する予定としている。 以上の状況に鑑み、本研究課題の研究目的の達成度について、おおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、報告書の執筆・編集を中心とする。とくに、霊井遺跡石器群の整理研究編については、挿図を含め、秋口までに完成させる。考察、資料編については、適時に作業をすすめ、報告書を年度内に刊行する。 報告書の執筆、編集の中で、まだ実見をすましていない東北三省、天津の資料について、詳細観察等をおこない、報告書に反映させる。また、アジア旧石器協会中国大会等で研究成果を報告し、各地の研究者から意見を求め、それらも報告書に反映させる。 諸般の原因により訪中が困難な状況になることが発生することも予想される。その場合には、①補足調査をせずに報告書作成を進める、②ロシア極東地方、韓国での調査をおこない、その成果を報告書に反映させる、③日本国内にある中国細石刃資料の調査をおこなう、などのいくつかの対応策が考えられる。その時の状況で最も妥当な策を採用し、対応したい。
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