本年度は、ケニアの農村と都市においてフィールドワークを実施するとともに、ケニア国立博物館にて現地研究協力者との研究打ち合せを行った。石田慎一郎と松園万亀雄は、ケニア共和国イースタン州イゲンベ県(ニャンベネ地方)の農村で聞き取り調査を実施した。とくにニャンベネ地方のギチアロ関係(伝統的義兄弟関係)に由来する尊敬行動が地域社会内部での紛争回避(自制や沈黙を含む)にはたす様態について民族誌調査をおこなった。また、農村で発生した殺人事件の処理に関する慣習法の運用について民族誌調査をおこなった。マウア町では、マウア地方裁判所において民事訴訟記録を閲覧して、公式司法における慣習法の扱いについて情報収集をおこなった。連携研究者の久保山力也は、メル弁護士会ならびにナイロビ市において、ケニア弁護士会を訪問し、ケニアにおける法律家に関する調査を行うための意見交換を行った。さらにナイロビ市において、紛争解決ならびに法的保護、法による正義の実情を調べるため、弁護士ならびに市民へのヒアリングを行った。研究協力者の馬場淳は、西ティガニア県において、紛争解決に関わる裁判所、警察署、チーフ・オフィス、長老結社(ジュリチェケ)に焦点を当て、それぞれの活動とセクター間のネットワークを調査した。さらに、東ティガニアのミキンドゥリ周辺に滞在し、家族・親族、年齢組や土地に関する民族誌的情報と具体的な紛争事例の収集を行った。代表者・分担者・連携研究者・研究協力者は、以上の調査を実施するのに先立ち、ケニア国立博物館を受け入れ先とする調査許可証(ケニア政府発行)を取得した。また、研究代表者は、ナイロビ大学出版局において研究成果公開にむけた打ち合わせをおこなった。
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