研究課題/領域番号 |
22401042
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
石田 慎一郎 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (10506306)
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研究分担者 |
松園 万亀雄 国立民族学博物館, 名誉教授 (00061408)
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キーワード | ケニア / 法 / 公共性 / 紛争処理 / オルタナティブ・ジャスティス / 法人類学 / 法社会学 / 民族誌 |
研究概要 |
本年度は、ケニアの農村と都市においてフィールドワークを実施するとともに、ケニア国立博物館を拠点とする現地研究協力者との研究打ち合せをおこなった。石田慎一郎と松園万亀雄は、前年度につづき、ケニア共和国イースタン州のニャンベネ地方(イゲンベ)の農村で聞き取り調査を実施した。とくにニャンベネ地方のギチアロ関係(伝統的義兄弟関係)に由来する尊敬行動が地域社会内部での紛争回避にはたす様態について民族誌調査をおこなった。また、農村で発生した殺人事件の処理に関する慣習法の運用について追跡調査をおこなった。マウア町では、マウア地方裁判所にて民事訴訟記録を閲覧し、公式司法における慣習法の扱いについて情報収集をおこなった。連携研究者の久保山力也は、多元的正義の在り方、国家法によらない紛争解決ならびに紛争解決の構造を探るため、メル市、モンバサ市、ナイロビ市等において、買売春の実態につきヒアリング調査をおこなった。売春の現状、売春の現場における紛争、病気や搾取に関する紛争などのデータを収集した。連携研究者の久保秀雄は、タクシー運転手に交通事故や保険について、交通事故を専門的に扱っているナイロビ大学病院医師に保険制度と訴訟の関係について聞き取りをおこなった。研究協力者の馬場淳は、東ティガニアのミキンドゥリ周辺に滞在し、長老結社(ジュリチェケ)に関する前年度の補足調査を行うとともに、結婚、シングルマザー、家庭におけるGV(ジェンダー・バイオレンス)をめぐる民族誌的調査を行った。またティガニア裁判所での調査にもとづき、公式的な紛争処理がローカルな非公式的紛争処理と接合するあり方について具体的事例と知見を得た。上記研究者5名は、ケニア国立博物館メル博物館を拠点とする地元研究者と共同研究会・研究打ち合わせをおこなった。また、代表者は、ナイロビ大学出版局において研究成果公開にむけた打ち合わせをおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、現地研究協力者の協力を得て、おおむね順調に進展している。また、2年度目であるが、日本国内での研究成果の公開は着実に進んでいる。その一方で、ケニアでの研究成果公開にむけたナイロビ大学出版局との打ち合わせが当初の予想どおりに進まなかった点が、本年度の反省点である。また、本年度は、ナイロビから調査地までの陸路での移動においての安全確保に十分な準備と注意が必要であることを深く認識した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本研究の4年計画において最大の調査実施期間を確保しており、研究計画実施の実証データの収集に多くの時間をあてる予定である。上記のとおり今後の課題としたナイロビ大学出版局との連絡は、ケニア側研究協力者の更なる協力をえて、ナイロビ滞在にあてる限られた時間を有効に活用したい。また、調査地までの陸路での移動については、他のケニア研究者と連絡を密にし、最も安全な移動手段の確保のために最大限の注意を払う。調査地での聞き取り調査については順調に進展しているため、当初の研究計画の変更は予定していない。
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