研究課題/領域番号 |
22401047
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
野林 厚志 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (10290925)
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研究分担者 |
森口 恒一 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (10145279)
松岡 格 早稲田大学, 付置研究所, 講師 (40598413)
笠原 政治 横浜国立大学, その他部局等, 名誉教授 (70130747)
宮岡 真央子 福岡大学, 人文学部, 准教授 (70435113)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 台湾原住民族 / 民族分類 / 日本統治時代 / エスニシティ / 人類学 / 国際研究者交流・台湾 / 国際情報交換・台湾 |
研究概要 |
本年度は研究計画にしたがい、研究代表者ならびに研究分担者はそれぞれの担当項目に関する現地調査を実施した。これらの成果は同課題名と同じ標題の中間報告書としてまとめ、電子ファイル化(PDF・A4版・122頁)し関連諸分野の内外の研究者に配信した。従来の科学研究費補助金による研究成果は終了年度に紙媒体による研究報告書をまとめるものが多かったが、本課題では中間時の成果を公開し、他の研究者による批判的検討により議論をきたえ、後半の研究活動をより洗練していくことを企図した。 代表者、分担者の協働した研究活動としては、平成24年7月に台湾から現地研究協力者を招聘し、国立民族学博物館における日本統治時代に台湾で収集された衣類資料の調査と分析、その結果に関わるワークショップを実施し、12月には当該研究課題である原住民族の分類の歴史性と現代の表象に関わるワークショップを現地研究協力者を招聘して福岡大学で実施した。また、代表者、分担者ともに、4月には天理大学で開催された国際学術シンポジウム「台湾原住民の音楽と文化」に、8月には台湾の台北科技大学・台湾原住民族文化園区において開催された国際シンポジウムである第5回台日原住民族研究論壇に出席し、発表者、議長、コメンテーターを、内外の研究者の参加する複数のセッションでつとめ、研究情報の交換や成果の国際的な公開を行った。従来の科学研究費補助金による研究活動は、代表者、分担者が個別に国際シンポジウム等に参加するものが多いが、当該課題では各人のそうした研究活動に加えて、研究課題の参加者がそれぞれの成果を相補させながら外部研究者ともに議論をねりあげる機会を意図的に増やし、海外学術調査の特徴を活かした実績を当該年度はとくに強化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、申請書に記載した年度計画にしたがった順調な研究、調査の遂行を行ってきた。これらの成果は学術雑誌、著編書、各種刊行物、メディアを通して着実に公開を果たしてきた。とくに、日本統治時代の学術資料については、統治初期における民族分類の萌芽期の資料を中心に精査を行うとともに、これらの資料のなかでも物質文化に関わる資料については、原住民族の研究協力者を日本に招聘し、資料の実見を協働して行うといった調査の展開をはかってきた。これは、当事者たる原住民族自身が民族分類に対して有してきた認識のありかたを物質文化の点から読み解く方法の一つであり、当初の目的の核心にあたる部分である。したがって、当該研究課題の目的のうち、1.台湾のオーストロネシア系先住諸民族が台湾の日本統治期(1895-1945年)に複数の民族集団へと分類されてきた歴史的背景を明らかにする、2.現在の台湾社会における民族認定の様相とそれにもとづく民族集団の再編に、従前の歴史的背景がどのような影響を与えているかを現地調査によって明らかにする、これらの項目についてはその土台をなすデータの収集が順調にはかられてきたと判断している。目的の3点目、1と2の結果にもとづき、民族の分類という営為をめぐる先住民族、先住民族含む現地社会、および分類を行ってきた施政者や研究者の関係についての人類学的モデルの構築については、最終年度に研究参加者全体で議論のすりあわせを行うとともに、他地域の先住民研究の関連した研究成果を当該研究課題の参加者と共有しながら、最終的な成果のとりまとめを行う必要がある。こうした見通しのもとで、例えば、代表者は所属機関における少数民族展示を担当したり、分担者の松岡はエスニック・マイノリティ研究会を主宰するといった試みをすでに開始しており、今後の展開の準備も十分に進められていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画にしたがい、最終年度に全体の研究成果のとりまとめを行う。最終年度はこれまでに行ってきた現地調査で得られたデータの分析結果、参加してきた内外の国際シンポジウム、ワークショップでの議論のふりかえりを個々の研究者で行うとともに、補足的な調査を参加者が自律的に計画、実施する。また、課題全体としての総括を代表者である野林が行うための研究集会を複数回、実施し、研究計画全体の成果の基本的な筋道の共有をはかっていくことにする。 具体的な研究成果の形態は、個々の参加者の研究論文、著編書等を基本としながらも、全体の研究報告書を中間報告書と同様に電子ファイルで刊行し、関連処分野の研究者に配布する予定である。
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