研究概要 |
海外共同研究者のLovelessを招聘し,国内調査及び日英の学校の情報化に関する比較検討を行った.英国調査では,小学校5校を訪問調査し,昨年度から継続して訪問している小学校においては,複数の学級において、Numeracy、Literacyの授業を参観し、校長及び授業者へのインタビュー調査を行った.国内におけるICT活用の動向については,研究メンバー全員が日常の研究活動において関わっている小学校の変容について継続して把握している.これらの調査結果と学校へのICT導入に関わるイノベーションモデルに関する先行研究等と合わせて考察し,日本におけるイノベーションモデルを検討した。 (1)普及段階では,教室へのICT機器の常設が活用の日常化を促す.英国ではIWB(電子黒板),日本では実物投影機の導入が効果的であった.この段階では,授業スタイルに変容は見られない. (2)教育の情報化に関する施策は,英国では主に管理職に,日本では教育委員会に影響する.英国では,管理職と補佐役としてのICTコーディネータがICT機器の整備と普及を推進し,日本では,教育委員会がICT環境整備を適切に推進しても,管理職が学校の情報化を推進しているケースは限られる.情報主任等が普及に努めている場合には,普及定着に時間がかかっている. (3)英国においては,教室のICT環境整備と校務の情報化が同時に進行し,評価情報が授業改善に積極的に活用されるなど,学校全体の情報化が実現している.日本では,それらが個々に進行している傾向が見られ,地域や学校によって格差が生じている. (4)イノベーションが進んだ英国の学校では,ICT活用が普及定着した後も,継続的にICT環境整備を進め,学習活動の多様化という授業スタイルの変容が見られる.日本では,先進的なICT環境整備が行われた学校でも,授業スタイルの大きな変化は見られない.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,英国調査,国内調査を継続し,日英比較に基づいたICTによる学校イノベーション過程モデルの開発,検証,修正を行う.特に,学校の情報化先進地域,先進校におけるイノベーションの動向を調査し,モデルに組み込む.
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