本年度は、1.過年度までに終えた権五〓・元韓国副総理兼統一院長官(元東亜日報社長)に対するオーラルヒストリーの証言記録の冊子化に向けた草稿チェック作業、2.崔相龍・元駐日韓国大使(高麗大学名誉教授)と康仁徳・元韓国統一部長官の2人に対するオーラルヒストリー実施、3.次年度以降のオーラルヒストリー実施候補者への打診の3点に取り組んだ。 権五〓氏のオーラルヒストリーによって、韓国ジャーナリストの世界観や政治家との距離、日韓国交樹立当時の韓国メディアの日本での取材手法、日本政治家の韓国観と韓国政治家の日本観、韓国の対北朝鮮政策の政策決定過程についての知見が得られた。草稿チェック終了次第、冊子化の予定である。 崔相龍氏と康仁徳氏の2人に対するオーラルヒストリーにあたっては、連携研究者である佐道明広・中京大学教授、高安雄一・大東文化大学教授、研究協力者である室岡鉄夫・防衛研究所主任研究官とともに実施した。崔氏に対するオーラルヒストリーでは、韓国知識人のアカデミックトレーニングの歩み、東京大学留学時代における丸山真男などら日本知識人との交流、韓国知識人と政治・行政との関係、日韓関係における駐日大使の役割などについての証言が得られつつある。康氏に対するオーラルヒストリーでは、解放前後の北朝鮮地域における社会状況(とくに教育)、朝鮮戦争前後の韓国社会(とくに思想動向)などに対する明確な証言が得られる途上である。 オーラルヒストリー実施候補者に対する交渉も順調で、実施の見通しが立った。
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